疾患を疑うポイント
●下痢,発熱,腹痛などがあり2週間以内に抗菌薬が投与されている場合は本症を疑う.
●入院中の下痢患者,白血球の著明な増加,馬小屋臭のある下痢便などでは本症を疑う.
学びのポイント
●抗菌薬関連腸炎の15~25%がCDIであり,偽膜性腸炎はCDIの重症型である.
●再発率の高さが特徴であり,再発例の45~65%はまた再発する.
▼定義
Clostridioides difficile(CD)による腸管感染症は,2歳以上で下痢を認め,CDI検査にて便中のトキシンが陽性もしくはトキシン産生性のCDを分離する,もしくは下部消化管内視鏡にて偽膜性腸炎を呈するものと定義されている〔第11章「クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎」の項(→)も参照〕.
▼病態
CDは偏性嫌気性グラム陽性桿菌で芽胞を産生し,胃酸・温熱・消毒薬への抵抗性が強く環境中で長く生存可能である.毒素にはトキシン A(腸管毒素)とトキシン B(細胞毒素)の2種類があり,トキシン Bのみ産生する株が約4%にみられる.正常の腸内細菌叢はCDの定着や増殖に抵抗を示すが,腸内細菌叢がかく乱されると,抗菌薬に抵抗性を示すCDが選択的に増殖し,毒素を産生し下痢などの症状を惹起する.
▼疫学
欧米では2000年代初頭にBI/NAP1/027という強毒株の流行が起こり,CDIが急増し重症例や死亡例が増加した.本菌は第3の毒素であるバイナリートキシンを産生し,フルオロキノロン耐性,著しい毒素産生性,高い死亡率をきたすなどの特徴がある.
▼分類
院内感染と市中感染の分類があり,市中感染は増加しており,若年者が多く,死亡率が低い.重症度は国別,学会別に種々の定義がみられる.
▼診断
健康保菌者がいるため,下痢がなければCDの検査は行わない.また,CDIの可能性が検査前から高いならば,検査結果が届く前でも陰性であっても,治療を考慮する.
関連リンク
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- 新臨床内科学 第10版/(2)抗菌薬関連出血性大腸炎
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- 新臨床内科学 第10版/9 病原大腸菌感染症
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- 今日の診断指針 第8版/細菌性赤痢
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- 今日の診断指針 第8版/腸管出血性大腸菌感染症
- 今日の小児治療指針 第17版/A群レンサ球菌感染症(劇症型感染を含む)
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