➊移植後成績
免疫抑制薬の進歩により,生体腎移植レシピエントの腎生着率は近年向上している.日本移植学会のデータでは,2010年以降の5年腎生着率は94.5%である(図9-34図).2000年以前は81.9%にとどまっていた.2010年以降の10年生着率も90%以上は維持できると予想される.献腎移植レシピエントの腎生着率にも改善がみられる.2010年以降の5年腎生着率は87.3%である.2000年以前は64.6%にとどまっていた.腎生着率向上の背景には,免疫抑制薬の進歩と,拒絶反応の早期診断の精度向上があるといわれている.
➋長期管理の実際
免疫抑制薬が長期的に使用される.基本的に維持免疫抑制療法は,リンパ球機能を抑制するために複数の薬剤が同時に使用される.ステロイド薬,カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン薬薬,またはタクロリムス薬),そして代謝拮抗薬(ミコフェノール酸モフェチル薬,またはミゾリビン薬)が処方される.カルシニューリン阻害薬を減量し,同薬剤の腎毒性を軽減する目的でmTOR阻害薬(エベロリムス薬)が使用されることもある.これらの薬剤には副作用があるため,血中濃度をモニタリングしながら使用する(表9-26図).
移植後の長期管理においては,拒絶反応のモニタリングがまず重要である.腎機能の悪化,蛋白尿の出現が見安となる.疑わしい場合は,エピソード移植腎生検で確認が行われる.しかし,近年の優れた免疫抑制薬療法下では,これらの所見がなく拒絶反応が腎臓内で進行していることがある.定期的な腎生検,プロトコール移植腎生検を実施し拒絶反応を確認する施設もある.病理判定基準であるBanff分類に基づいて拒絶反応は診断される.拒絶反応が発見された場合は,タイプにもよるが,ステロイドパルス療法,グスペリムス,リツキシマブ薬,ボルテゾミブ薬,免疫グロブリン大量静注,血漿交換などが使用さ
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