▼定義
菌血症(bacteremia)の定義は,細菌または真菌が血流中に生きて存在する状態である.菌血症と敗血症(sepsis)は同一でない.敗血症は感染症により制御不能な生体反応が起こり,生命にかかわる臓器障害が起こっている状態であり,菌血症を伴う場合が多いが,菌血症がなくとも起こる.
▼分類
菌血症は,①一過性菌血症,②間欠的菌血症,③持続的菌血症の3つのタイプに分類される.
➊一過性菌血症
数分から2~3時間までの間,一過性の菌血症が起こり,生体防御機構により排除される.例えば歯科的治療,消化管の生検,経皮的にカテーテルを血管内,膀胱内,総胆管内などに挿入する処置など,細菌の存在する皮膚や粘膜部位に傷がつくような処置の後や外科的ドレナージ,壊死組織除去の処置後などに起こる.一部の患者は感染性心内膜炎,骨髄炎などの臓器感染を合併しうる.
➋間欠的菌血症
同じ菌による菌血症の発生と生体防御機構による血流からの排除を繰り返す.ドレナージされない閉鎖部位の感染,例えば腹腔内感染,軟部組織感染,胆管炎,肝膿瘍,肺炎,骨髄炎,腎盂腎炎などで起こりうる.進行すると敗血症や敗血症性ショックになる.
➌持続的菌血症
感染性心内膜炎,感染性動脈瘤,人工血管感染,血管内カテーテル感染,敗血症性血栓性静脈炎など主に心臓血管系感染や腸チフスなどで起こる.菌量の多い菌血症を起こす.
▼診断
菌血症の最も感度の高い診断方法は血液培養検査である.
▼病態・合併症
一過性の菌血症は,健康者ではたいていの場合,自然治癒しうる.しかし一部の人は,細菌が菌血症により諸臓器に播種して,感染性心内膜炎や骨髄炎などを合併する.
感染による血液培養陽性の菌血症患者は,適切な抗菌薬治療を行わないと95%は敗血症や敗血症性ショックを合併して致命的になりうる.
▼治療
心臓に既存の病変があり,感染性心内膜炎のリスクのある患者などでは
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