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治療

【2】細菌性食中毒
bacterial food poisoning
外間 昭
(琉球大学病院・光学医療診療部診療教授)

疾患を疑うポイント

●悪心,嘔吐,腹痛,下痢,血便,発熱などがみられる.

●どの年齢層でも発症し,時に集団発生する.

学びのポイント

●細菌性消化管感染症のうち飲食物を媒介として発症するのが細菌性食中毒.

●潜伏期間によって原因菌を推定できる.

▼定義

 食品,添加物,器具または容器包装に含まれた有害物を摂取することによる衛生上の危害を食中毒という.その原因となる微生物(細菌,ウイルス,寄生虫),自然毒(植物性,動物性),化学物質のうち,細菌によるものを細菌性食中毒とよぶ.

▼病態・分類

 細菌性食中毒は,毒素型と感染型に分類される.毒素型は,食品内で細菌が産生した毒素を摂取することで生じ,感染型は,食品内の細菌が摂取されたあと,腸管内で増殖して生じる.

 毒素型は,黄色ブドウ球菌,ボツリヌス菌やセレウス菌が原因菌であり,30分~数時間と早期に発症する.感染型は,カンピロバクター,サルモネラ属菌,病原大腸菌(腸管出血性大腸菌など),ウェルシュ菌,腸炎ビブリオ,コレラ菌,赤痢菌など多くの原因菌がある.腸管内で菌の増殖が必要なため,潜伏期間は,半日~数日である.それぞれの菌種の詳細は,本章の各論を参照.

▼疫学

 わが国の食中毒は,厚生労働省食中毒統計によると,2018年の発生件数は1,330件,患者総数は17,282人であった.細菌性が全食中毒患者数の4割を占めており,そのうちカンピロバクターが最も多い(図11-8).死亡者数は年10人以下だが,その原因としては腸管出血性大腸菌が多い.

▼診断

 症状は原因菌によって異なるが,悪心,嘔吐,腹痛,下痢,血便,発熱などがみられる.

 診断には,問診がきわめて重要である.食事内容,基礎疾患,海外渡航歴,周囲に同症状の人がいないか,ペットの有無などを詳細に聞く.

 原因菌は,便や吐物などから分離培養するか,抗原,毒素や遺伝子を検出して診断する.食品衛生法により医師

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