診療支援
治療

7 麻疹(はしか)
measles(rubeola)
岩田 敏
(国立がん研究センター中央病院・感染症部感染症部長)

疾患を疑うポイント

●発熱を伴う発疹がある(通常は発熱が先行する).

●鼻汁,くしゃみ,咳嗽,眼脂などのカタル症状を伴っている.

●麻疹患者との接触歴,周囲での流行がある.

学びのポイント

●麻疹ウイルスの空気感染,接触感染により起こる感染症で,発熱,発疹が特徴.

●感染力はきわめて強く,感受性者が麻疹患者と接触した場合の発病率は90%で,不顕性感染はほとんどない.

●典型的な経過は,発熱とともに鼻汁,くしゃみ,咳嗽,眼脂などのカタル症状が3~4日間続き,一過性に解熱した後再発熱とともに発疹(紅斑性丘疹)が出現,発症後7~9日以降に解熱し,発疹は褐色の色素沈着を残して消退する.

●頰粘膜に出現する粘膜疹(Koplik斑)は特徴的で,発症後発疹が出現する前から認められ,診断に有用.

▼定義

‍ 麻疹ウイルスの空気感染,飛沫感染,接触感染により起こる発熱と発疹を伴う感染症である.

▼病態

 麻疹ウイルスはパラミクソウイルス科モルビリウイルス属のRNAウイルスである.

 潜伏期間は通常8~12日,曝露後7~21日の間は発症する可能性がある.病期はカタル期,発疹期,回復期の3期に分けられる.

カタル期

 3~4日間.発熱とともに鼻汁,くしゃみ,咳嗽,眼脂などのカタル症状が認められる.この時期の感染力が最も強い.発疹の出現する2日ほど前に,頰粘膜に紅暈で囲まれた粟粒大の白斑であるKoplik(コプリック)斑が出現する.この粘膜疹は麻疹に特有で診断上重要な所見であり,Koplik斑を確認することにより,発疹出現前に麻疹と診断することが可能である.

発疹期

 3~4日間.カタル期の発熱が3~4日間続き,いったん熱が下がった後再度発熱し,同時に発疹が出現する.発疹はまず耳の後ろ,顔面,項部から出現し,体幹,四肢へ広がる.発疹は不整形の数mm~1cmくらいの紅斑性斑状丘疹で,病日が進むと融合して色調も暗赤色となる.高熱と

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