診療支援
治療

8 風疹(三日はしか)
rubella(german measles)
岩田 敏
(国立がん研究センター中央病院・感染症部感染症部長)

疾患を疑うポイント

●発熱を伴う発疹がある(通常は発熱と同時に発疹が出現する).

●鼻汁,くしゃみ,咳嗽などのカタル症状は認められない.

●耳介後部,後頭部のリンパ節腫脹.

学びのポイント

●風疹ウイルスの飛沫感染,接触感染により起こる感染症で,発熱,発疹,リンパ節腫脹が特徴.

●発症した場合の典型的な経過は,発熱と同時に紅斑性斑状丘疹が顔から全身に広がり,平均3日で終息する.

●妊娠中に感染すると胎児に感染し,先天性風疹症候群を発症する〔特論()参照〕.

▼定義

‍ 風疹ウイルスの飛沫感染,接触感染により起こる発熱,発疹,リンパ節腫脹を伴う感染症である.

▼病態

 風疹ウイルスはトガウイルス科ルビウイルス属に属するRNAウイルスで,エンベロープを有する.上気道分泌物からの飛沫感染,接触感染により発症し,麻疹と比べて感染力は弱く,不顕性感染が多い(感染を受けた者の25~50%).潜伏期間は通常16~18日,曝露後14~21日の間は発症する可能性がある.発疹が出現する7日前から発疹出現14日後まで感染力がある.

 発熱,発疹,リンパ節腫脹,関節痛,全身倦怠感が主要な症状である.発熱は約半数の症例でみられるが微熱の場合も多く,カタル症状はあまり強くはない.発疹は2~5mmの細かい斑状丘疹で,顔面から始まって体幹,四肢へ広がる.約3日間で解熱,発疹は消退し,色素沈着や落屑は残さない.類似の発疹を呈する発熱発疹性疾患や薬疹との鑑別が難しく,臨床症状のみからの診断は困難で,確定診断のためには検査室診断を要する.リンパ節腫脹はしばしば発疹よりも先に出現し,耳介後部や後頭部のリンパ節腫脹が特徴的である.

 合併症として3,000人に1人の頻度で血小板減少性紫斑病を,6,000人に1人の頻度で急性脳炎を起こす.また妊婦が罹患すると胎児に先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CR

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