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治療

3 高IgE症候群
hyper-IgE syndrome
峯岸 克行
(徳島大学先端酵素学研究所・免疫アレルギー学分野教授)

▼定義

 黄色ブドウ球菌による皮膚膿瘍と肺炎,肺炎罹患後の肺囊胞,皮膚粘膜のカンジダ症,新生児期より発症する重症アトピー性皮膚炎,血清IgEの著しい高値を特徴とする免疫不全症.多くで特有の顔貌,軽微な外力による骨折,骨粗鬆症,脊椎側弯症,関節の過伸展,乳歯の脱落遅延などの骨,軟部組織,歯牙の異常を合併する.

▼病態

 主要な病因はSTAT3遺伝子のドミナントネガティブ変異.STAT3は40種以上のサイトカイン・増殖因子のシグナル伝達に必須の分子である.STAT3機能不全によるTh17細胞の分化障害が黄色ブドウ球菌とカンジダ感染症に関与していると考えられているが,それ以外の病態形成機構は不明.

▼疫学

 発症頻度が低いためその正確な発症頻度は不明であるが,出生1/10万~100万程度と推定されている.男性と女性に同じ頻度でみられ,人種間の差異もない.常染色体優性遺伝しうる疾患であるが,約90%がSTAT3遺伝子のde novo変異による孤発例である.

 非アトピー型喘息は成人後に発症することが多い.成人発症喘息に特有な合併症としてアスピリン喘息(後述)がある.

▼診断

 高IgE症候群の臨床診断は,臨床診断スコアにより実施する.血清IgE値や好酸球数,肺炎・皮膚膿瘍の罹患回数,脊椎側弯症,病的骨折,乳歯の脱落遅延,特徴的顔貌,肺の器質的病変の有無で得点化し,高得点のものを高IgE症候群と診断する.古典的な臨床症状は,炎症所見の明らかでない膿瘍(cold abscess)であるが,抗菌薬の投与により皮膚細菌感染症の管理が向上したこともあり,最近の症例ではその頻度が低下している.患者が年少の場合,典型的な症状がそろわず臨床診断は困難で,遺伝子診断が必要になる.末梢血中の免疫細胞のシグナル伝達を評価することにより診断することも可能である.

▼治療

 高IgE症候群の予後を改善するために,新生児期に発症

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