診断のチェックポイント
●定義
❶片麻痺は一側の上下肢(顔面を含む場合と含まない場合がある)の運動麻痺,単麻痺は四肢のうちの一肢の運動麻痺である。
❷通常,脳内を走行する錐体路の障害を反映する。橋より下方の障害であれば顔面筋力は保持される。
❸上肢の単麻痺は通常頸髄,上腕神経叢およびその遠位の末梢神経障害で,下肢の単麻痺は胸髄,腰髄,腰神経叢およびその遠位の末梢神経障害で生ずる。
❹脳血管障害をはじめとする中枢神経疾患で生じ,上肢単麻痺は腕神経叢障害,絞扼性末梢神経障害で起こることが多く,下肢単麻痺は腰椎椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患で起こることが多い。
【1】病歴
❶片麻痺,単麻痺ともに発症様式,発症時の状況を詳細に聴取する必要がある。
■発症様式:脳卒中を含む血管障害では突発発症が特徴的であるが,感染症,炎症性疾患では数日かけて症状が進行し,また腫瘍,変性疾患では緩徐に症状が進行する。
■発症時の状況
・起床時の発症なのか日中活動時の発症なのかも病因の検索に重要である。
・絞扼性末梢神経障害による単麻痺では就寝中の姿勢により橈骨神経麻痺をきたすことが多く,腰椎椎間板ヘルニアでは腰部への衝撃が誘因となることがある。
❷痛みを伴うか
■脳血管障害をはじめとした中枢神経疾患による片麻痺,単麻痺では一般に患側肢に痛みを伴わない。
■頭痛,特に後頸部痛が片麻痺に前駆したり伴う場合は,脳動脈解離に伴う脳梗塞や解離性脳動脈瘤によるくも膜下出血を念頭におく。痛みを伴った上肢麻痺で最も多いのは腕神経叢障害による有痛性筋萎縮症である。
■絞扼性神経障害,例えば正中神経障害では手指の脱力とともに手掌のしびれ,痛みを伴うことが多い。
■突発する腰痛と下肢単麻痺では前脊髄動脈領域の脊髄梗塞も考慮に入れる。
❸顔面筋力低下,言語障害はないか:中枢性顔面神経麻痺,失語や構音障害を伴う場合は,中枢神経疾患によると考えられ,診断確定,治療
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