診断のチェックポイント
腹痛は,一般臨床医が日常診療において遭遇する最も頻度の高い症状の1つである。腹痛を呈する状態には,良性疾患が原因で自然軽快する軽症のものから,緊急を要し重篤な経過をたどるものまであり,緊急治療が必要な重篤な病態を見逃さず診断することが必要である。また,婦人科領域,泌尿器科領域など消化器系以外の領域も念頭におき診断する必要がある。急性腹症の詳細については別項(→)を参照。腹痛の鑑別診断において,腹痛の発生機序と腹痛の部位の両者を考えながら情報を集め,診断を進める。
●定義:腹痛は腹部に感じる痛みとして自覚される症状であり,疼痛の機序別に内臓痛,体性痛,関連痛の3つに分類される(表1図)。腹痛は,腹腔内のみならず腹腔外臓器が原因で起こることもあり,注意が必要である。
【1】病歴:消化管,胆膵疾患などの消化器疾患だけでなく,血管病変,婦人科疾患,尿路系疾患など腹部臓器に由来する疾患,さらに腹部臓器以外の疾患も念頭におきながら病歴を聴取する。
❶腹部手術・外傷の既往,妊娠,薬剤,飲酒,海外旅行歴などを聴取しておく。
❷腹痛の症状:急性に発症したか慢性のものか,痛みの性状(鈍い・持続する・差し込むようななど),悪心・嘔吐の有無,経口摂取,排便(下痢,血便)との関係,体位,体動,深呼吸,咳嗽などによる影響を聴取する。
❸緊急性の高いred flag signの確認:1)突然発症,2)発症時から痛みが非常に強い,3)増悪していく痛み,4)睡眠中に覚醒してしまうほどの痛み,5)疼痛パターンや局在が変化する痛み,6)持続する嘔吐・発熱,7)食欲や意識状態の変化,の有無を確認する。
❹症状が強く,患者から十分な問診ができない場合には,家族や同伴者から十分な情報を得ることが必要である。
【2】身体所見:全身状態により緊急性を判断し,迅速かつ十分に理学的所見の把握を行う。腹痛と関連する徴
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