診療支援
診断

脳炎
Encephalitis
森田 昭彦
(日本大学准教授・神経内科)

診断のポイント

【1】脳実質の炎症により生じ,発熱と中枢神経系症状を呈する。髄膜と脳実質に病変をみるものは髄膜脳炎とよばれる。

【2】典型的には38℃以上の発熱と24時間以上続く意識障害や意識の変容,けいれん,神経巣症状をみる。

【3】髄液では5/μL以上の細胞増多をみる。

【4】頭部MRIなどの神経画像検査や脳波で脳炎に伴う異常を反映した所見を高率にみる。

緊急対応の判断基準

【1】神経救急疾患であり,臨床症状から脳炎が否定できないすべての患者で緊急対応が求められる。

【2】単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)によるものが最も多いが病初期に病因確定診断できないため,わが国の「単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2017」ではウイルス性脳炎が疑われるすべての患者に対して来院6時間以内のアシクロビル開始を推奨している。

症候の診かた

【1】意識障害・変容

❶意識混濁に精神運動興奮や幻覚を伴うことが多いことから,意識の清明度だけではなく意識の方向性の変化も観察することが重要である。

❷幻覚や不安,興奮,性格変化,多動多弁,異常行動などが前景に立ち,意識清明度の低下が明らかでないこともある。

【2】けいれん

❶脳炎は急性症候性発作の原因となる。脳炎の発症と同時に単回のてんかん発作を呈することが多いが,再発する,あるいはけいれん重積状態に至ることもある。

❷けいれん発作の再発が考慮される,けいれん重積状態の場合には抗てんかん薬を使用する。

【3】神経巣症状

❶病初期にみられた意識障害・変容,けいれんなどが治療により改善した後に顕在化する記銘力障害などを中心とした高次脳機能障害のほか,片麻痺や半盲,半側空間無視などがみられる。

❷脳幹や小脳に病変を有するものでは脳神経麻痺や運動失調などがみられる。

【4】皮疹

❶水痘・帯状疱疹ウイルス性脳炎では,神経支配領域に一致した有痛性水疱をみるのが典

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