診断のポイント
表1図に診断基準を示す。
【1】糖尿病性多発ニューロパチー(diabetic polyneuropathy:DP)の病型が多く,両側の足先や足底に疼痛や異常感覚,自律神経障害などがみられる。
【2】DPでは両側アキレス腱反射が低下ないし消失し,両側内踝の振動覚低下がみられる。
【3】神経伝導検査や,自律神経機能を評価する心拍変動検査は有用である。
【4】動眼神経麻痺などの単ニューロパチーや,糖尿病性筋萎縮症などの病型も存在する。
【5】他疾患との鑑別が重要である。
症候の診かた
【1】DPの症状:最初に両側対称性に足の疼痛や異常感覚がみられ,後には感覚鈍麻がみられるようになる。徐々に症状は上行して,後期になると上肢末端にも及ぶようになる。起立性低血圧,発汗異常,便秘,下痢,排尿障害,勃起不全などの自律神経障害もみられる。運動麻痺や筋萎縮などの運動障害は,目立たないことが多い。
【2】DPの診察所見:アキレス腱反射の低下・消失と,下肢遠位部における振動覚低下が重要である。アキレス腱反射は,仰臥位のみで確認するのは難しいことが多く,腹臥位あるいは膝立位で行っても低下消失していることを確認するのがよい。振動覚はC128音叉を用いて調べ10秒以下が低下の目安であるが,高齢者の場合にはその評価は慎重に行う必要がある。
【3】糖尿病患者で,動眼神経麻痺や外転神経麻痺などの外眼筋麻痺が急に生じた場合:糖尿病性の単ニューロパチーの可能性を考える。ただ,重症筋無力症やFisher症候群など,他の原因の十分な鑑別が必要である。
【4】一側あるいは両側の殿部や大腿部の筋萎縮や筋力低下をきたす場合:糖尿病性筋萎縮(腰仙部根神経叢神経障害)の可能性を考える。
【5】手根管症候群もしばしばみられる。
検査所見とその読みかた
【1】神経伝導検査:DPの診断確定には,神経伝導検査が重要である。下肢の神経の障害が強
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