診療支援
診断

本態性高血圧
Hypertension
長谷部 直幸
(旭川医科大学教授・内科学講座循環・呼吸・神経病態内科学分野)

診断のポイント

【1】高血圧の診断基準値:診察室血圧値で140/90mmHg以上,家庭血圧値で135/85mmHg以上,24時間自由行動下血圧値で130/80mmHg以上である(表1)。診察室血圧値と家庭血圧値は,それぞれ正常血圧・正常高値血圧・高値血圧に分類される(表2)。診察室血圧と家庭血圧の値に差がある場合,家庭血圧による診断を優先する。

【2】診察室血圧の測定

❶カフを心臓の高さに保ち安静坐位の状態で測定する。

❷1~2分の間隔をおいて複数回測定し,安定した2回の平均値を血圧値とする。高血圧の診断は,少なくとも2回以上の異なる機会の血圧値によって行う。

【3】家庭血圧の測定

❶上腕カフ血圧計で原則,朝・晩1機会に2回測定してその平均値を用いるが,1回のみ測定した場合にはその値を用いる。

❷家庭血圧による高血圧診断には,朝・晩の測定値7日間(少なくとも5日間)の平均値を用いる。

【4】診察室血圧と家庭血圧の値から,診察室でのみ血圧高値を示す白衣高血圧,診察室は正常範囲でありそれ以外では高血圧を示す仮面高血圧を診断する(図1)。

【5】高血圧の90%は原因の特定されない本態性高血圧であり,遺伝的素因や生活習慣(食塩摂取量,肥満,運動不足,ストレス,飲酒など)が強く関与している。10%は原因の明らかな二次性高血圧であり,原因の検索と特定が必要である。

緊急対応の判断基準

【1】高血圧緊急症

❶直ちに降圧が必要な高血圧緊急症には,高血圧性脳症,大動脈解離,肺水腫を伴う急性心不全,重症高血圧を伴う急性冠症候群,褐色細胞腫クリーゼ,子癇や重症高血圧を伴う妊娠などがあり,急速な臓器障害の進行を阻止するため,入院のうえ,直ちに経静脈的降圧治療を開始する。

❷原則として,それぞれの臓器別専門医や高血圧専門医のいる施設に治療を依頼する。

【2】二次性高血圧が疑われる場合:時期を失することなく診断確定のための

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