診療支援
診断

慢性閉塞性肺疾患(COPD)
Chronic Obstructive Pulmonary Disease
長瀬 隆英
(東京大学大学院教授・呼吸器内科学)

診断のポイント

【1】喫煙歴あり(特に40歳以上)。

【2】咳(特に湿性),痰,喘鳴。

【3】労作時(階段や坂道の登りなど)の息切れ。

【4】風邪(上気道)症状時の咳,痰または労作時息切れ(風邪で顕在化することあり)。

【5】風邪(上気道)症状を繰り返す,または回復に時間がかかる。

症候の診かた

【1】咳,痰

❶COPDで通常認められる。若年発症COPDでは痰,高齢発症COPDでは咳が初発症状であることが多い。

❷風邪で顕在化することもある。特に高齢者では,COPDを風邪と誤診されることが多いので注意する。

【2】労作時の息切れ

❶階段や坂道の登りなどの労作で生じる。COPDの初発症状であることが多い。

❷友人と比べて歩くのが遅くなった,外出が減った,などの症状で現れることもある。風邪で顕在化することもある。

【3】理学所見

❶典型的には胸郭前後径の拡大,口すぼめ呼吸,聴診上肺音の減弱などが知られているが,これらがみられなくてもCOPDを否定することはできない。

❷重症例ではチアノーゼを認めることもある。

【4】併存症

❶心・血管疾患,高血圧症,糖尿病,脂質異常症,骨粗鬆症などの患者はCOPDを併存することが多い。

❷必ず喫煙歴をチェックし,COPDを見落とさないようにする。

検査所見とその読みかた

【1】スパイロメトリー

❶確定診断においても,また重症度分類においても重要となる。

❷気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーで1秒率が70%未満であればCOPDと診断する。

❸気流閉塞をきたす疾患を鑑別する。

【2】画像診断

❶胸部X線写真:肺野の透過性亢進,横隔膜平低化などが特徴である。

❷胸部CT:肺気腫病変が低吸収領域として描出される。

❸類似病態を示しても特徴的な病変が存在する気管支拡張症,肺結核後遺症,びまん性汎細気管支炎などはCOPDの範疇に入らない。したがって,診断を確定するためには,X線写真によりこれらの疾患を除外す

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