診療支援
診断

血液疾患・悪性腫瘍に伴う腎障害
Kidney Disease associated with Hematological Disorder and Malignancy
柳田 素子
(京都大学大学院教授・腎臓内科学)

 悪性腫瘍を有する患者は,腫瘍自体や薬剤の影響を受け,急性腎障害を発症しやすい環境下にある。急性腎障害は,1)腎前性,2)腎性,3)腎後性に分類されるが,癌患者の急性腎障害もこの3つに分類できる(表1)。悪性腫瘍に伴う腎機能異常には電解質異常など急性腎障害以外の病型を呈することもあるが,今回は,悪性腫瘍に伴う膜性腎症,多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)(骨髄腫腎),腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome:TLS),血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy:TMA)に伴う腎障害を概説する。

[Ⅰ]悪性腫瘍に合併する膜性腎症

診断のポイント

【1】膜性腎症の5~25%に悪性腫瘍が合併する。

【2】肺癌,胃癌,結腸癌の随伴が多い。

症候の診かた

 浮腫(下腿,顔面,眼瞼)。

検査所見とその読みかた

 蛋白尿,低蛋白血症,脂質異常症の所見を示す。

確定診断の決め手

 腎生検で糸球体基底膜上皮下の免疫複合体沈着と基底膜の反応性変化(スパイク形成,点刻像,びまん性肥厚)を認める。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】ネフローゼ症候群を呈する他疾患(微小変化型ネフローゼ症候群,巣状分節性糸球体硬化症など)と腎生検で鑑別する。

【2】特発性膜性腎症

❶形態的には鑑別できない。

❷沈着した免疫複合体内のIgGサブクラスでは,特発性ではIgG4が,悪性腫瘍関連ではIgG1とIgG2が多い。

❸血中の抗PLA2R抗体の有無が将来的には鑑別に役立つとされる。

確定診断がつかないとき試みること

 腎生検で膜性腎症と診断されれば,患者の危険因子を見直す。以下のスクリーニング検査で癌が診断できなければ,慎重に長期的フォローをする。

【1】内視鏡検査

【2】重度喫煙者:胸部CT。

【3】男性:PSA測定。

【4】女性:マンモグラフィを含めたスクリーニング検査。

治療法ワンポ

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