診療支援
診断

小児の百日咳
Pertussis (Whooping Cough)
岡田 賢司
(福岡看護大学教授・基礎・基礎看護部門基礎・専門基礎分野)

診断のポイント

【1】感染症法では,2018年1月から5類感染症・全数把握疾患に改定され,検査で確定された例は全例報告が義務づけられた。届出のための基準を表1に示す。

【2】新生児から高齢者まで,どの世代でも感染・発症する。

【3】周囲にワクチン未接種の乳児がいる場合,感染源となるリスクを評価し迅速な治療を行うためにも,百日咳菌の分離およびLAMP法などによる遺伝子検出などで病原体の有無を確認する。

緊急対応の判断基準

 百日咳含有ワクチン接種前の早期乳児では,特徴的な咳が認められる前に,無呼吸の頻発など低酸素状態となることがある。早期乳児では,低酸素に十分な対応が必要となる。

症候の診かた

【1】咳:最も頻度が高い。咳の期間は問わずに,1)発作性の咳嗽,2)吸気性笛声,3)咳嗽後の嘔吐が本症に特徴的な咳で,受診時にはなくても問診ではあったかどうかを聞き出すことがポイントである。

【2】咳以外

❶乳児では,特徴的な咳が出現する前にチアノーゼの有無を問わない無呼吸発作に注意が必要である。

❷1歳以上では成人を含めて息詰まり(窒息)感,呼吸困難なども認められることがある。

検査所見とその読みかた

 抗菌薬適正使用の観点から,抗菌薬治療開始の判断材料となるのは,菌分離および病原体遺伝子の検出で,血清抗体価は判断材料とならない。

【1】培養

❶病原体を分離することは,感染症診断の基本で,菌が分離されれば適正な抗菌薬治療ができる。

❷後鼻腔検体が望ましい。検査室では,選択培地に塗布して分離が行われるため,事前に検査室に百日咳を疑っていることを伝えることがポイントである。

❸咳発症後4週間以内の分離率が高いが,抗菌薬が投与されている例では分離が難しいこともある。分離の有無で抗菌薬の感受性も評価できる。

【2】遺伝子検査

❶ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法,LAMP法が利用できる。LAMP法は保険収載されている。

❷いずれ

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