診療支援
治療

気分障害の併存疾患(物質,不安障害,パーソナリティ障害など)
comorbidities of mood disorders
大谷 真
(東京大学医学部附属病院特任講師(病院)・心療内科)
秋山 剛
(NTT東日本関東病院・精神神経科部長(東京))

◆疾患概念

 気分障害は,極端な気分の揺れとそれに伴う活動性の変化を主症状とする疾患群である.米国精神医学会の診断基準(DSM-5)によると,気分障害は,抑うつ障害群と双極性障害および関連障害群に分けられる.抑うつ障害群では,うつ状態のみが出現するが,双極性障害および関連障害群では,一般に,躁状態(軽躁状態も可)とうつ状態の両方が出現する.

 気分障害に併存疾患が非常に多いことはよく知られている.特に,物質関連障害(アルコール依存症など),不安障害(パニック障害,社交不安障害,全般性不安障害,強迫性障害など),パーソナリティ障害(境界性パーソナリティ障害など),摂食障害(神経性過食症など)などが臨床上問題になることが多い.

◆診断のポイント

 操作的診断(DSM-5)を用いる.DSM-Ⅳ-TRの多軸評定を行うことが,併存疾患を見落とさないためのコツである.気分障害の患者を診療する際には,気分障害に併存疾患が多いことを念頭におき,他の疾患の併存の有無について常に配慮することが望ましい.Ⅰ軸(精神疾患),Ⅱ軸(パーソナリティ障害・精神遅滞)の併存だけでなく,片頭痛,過敏性腸症候群などのⅢ軸(一般身体疾患)の併存疾患にも注意を払うことが必要である.片頭痛は国際頭痛分類第3版beta版過敏性腸症候群はRome Ⅲで操作的に診断ができる.

 ただし,Ⅱ軸のパーソナリティ障害については,診断を慎重に行う必要がある.特に適切な治療が施されていない双極性障害の患者では,境界性パーソナリティ障害と似た表現型を呈することが少なくない.気分障害の治療を十分に行ったあとに,パーソナリティ障害の診断基準を満たすような症状が残るのであれば,その時点で初めてパーソナリティ障害の診断をつけるようにする.

◆治療方針

A.治療方針の概要

 気分障害の併存疾患は,一般的に気分の揺れに伴って増悪したり改善したりすることが多い.

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