診療支援
治療

パーソナリティ障害と気分障害
personality disorders and mood disorders
池田暁史
(文教大学教授・臨床心理学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 パーソナリティ障害の疾患概念についてはを参照のこと.本項と関連の深い境界性パーソナリティ障害borderline personality disorder(BPD)の特徴を簡単にまとめると,不安定な対人関係(依存と攻撃),慢性的な抑うつ感・空虚感,衝動性,一過性の精神病症状の4つとなる.

 気分障害の疾患概念についても,双極性障害(),双極スペクトラム(),混合性病相()などの各項を参照していただきたい.それでも,本項で特に注目する双極Ⅱ型障害の特徴だけは挙げておきたい.双極Ⅱ型障害では,うつ状態が優位でありながらも,そこに軽躁の成分が混入するため,特有の病像を呈しやすい.すなわち,不全型の抑うつ(楽しいことがあると元気になったり,気の進まない状況では気分が落ち込んだりする),乱費や不特定多数との性交などの逸脱行動,気を紛らわす手段としての嗜癖(過食嘔吐やアルコール依存),などである.

◆診断のポイント

 上述したように,BPDと双極Ⅱ型障害では,気分の移ろいやすさ,自傷や嗜癖などの行動面での問題,一過性に精神病症状を呈する可能性などが共通している.そのうえ,BPDの衝動性・攻撃性と双極Ⅱ型障害の軽躁状態に伴う易怒性・易刺激性との見極めもきわめて難しい.

 また,BPDの問題が顕在化するのが,特定の異性との関係性が生活上の重要な関心となる青年期-成人期前期であるのに対して,双極Ⅱ型を含む双極性障害の発症年齢も20歳代が多い.性差に関しても,BPDが女性に多いことは知られているが,双極Ⅱ型障害も女性に多いのではないかといわれている.

 よって,BPDと双極Ⅱ型障害は「若い女性で,抑うつをベースにした気分の変動性と,多彩な問題行動を示す」という同じ「表現型」をもつ.

 ところが臨床家はどうしても,BPDと行動化,双極性障害と気分の波,という組み合わせで

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?