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治療指針

糖尿病合併症
diabetic complications
石垣 泰
(岩手医科大学教授・糖尿病・代謝・内分泌内科)

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GL糖尿病診療ガイドライン2019

GL糖尿病治療ガイド2022-2023

 糖尿病合併症は急性合併症と慢性合併症に分けられ,いずれも患者のQOLと予後を悪化させるため,それらの発症予防と進展阻止が糖尿病治療の目標である.急性合併症には高度のインスリン作用不足による糖尿病性ケトアシドーシス(参照)と高浸透圧高血糖状態(参照),および糖尿病薬物治療に関連した低血糖症(参照)がある.長期の高血糖による慢性合併症としては,糖尿病網膜症(参照),糖尿病性腎症(参照),糖尿病性神経障害,糖尿病性足病変,および動脈硬化性疾患〔冠動脈疾患:「無症候性心筋虚血」(),「急性心筋梗塞」()参照,脳血管障害:「急性期脳梗塞(ブレインアタック)」()参照,末梢動脈疾患:「閉塞性動脈硬化症」()参照〕がある.

 本項では,他項で取り上げられていない慢性合併症,および「その他の合併症」と称される糖尿病と併存しやすい疾患について取り上げる.

Ⅰ.糖尿病性神経障害

治療のポイント

・良好な血糖コントロール維持が重要である.

・アルドース還元酵素阻害薬を早期から用いることが進展予防に有効である.

・しびれ,自発痛などに対しては有痛性神経障害治療薬を用いる.

・自律神経障害に対しては対症療法を行う.

◆病態と診断

・慢性的高血糖を基盤として,四肢遠位(通常足先,足裏から)に左右対称性に発症し,糖尿病性多発性神経障害とよばれる.糖尿病細小血管症(三大合併症:ほかに網膜症,腎症)のなかでは最も早期に出現する.高血糖以外に,喫煙,高血圧,脂質異常,肥満が発症・進展に関与する.

・末梢神経代謝異常と細小血管障害に伴う血流低下・低酸素状態によって神経軸索変性が始まり,神経線維密度が低下する.

・自覚症状として両下肢のしびれ,疼痛,異常感覚が出現するが,神経障害を有していても半数以上は無症状である.病態が進行する

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