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GLOnco-cardiologyガイドライン(2023)
ニュートピックス
・2022年に欧州心臓病学会(ESC)より世界初の腫瘍循環器診療に関するガイドラインが発行された.本邦においても2023年3月に「Onco-cardiologyガイドライン」が発行された.
治療のポイント
・心血管毒性のある抗癌薬使用前に循環器リスク評価を行う.
・特にアントラサイクリン系薬剤やHER2阻害薬による心不全/心機能低下の頻度は高く,薬剤開始後は心臓超音波検査やBNP,心筋トロポニンによる定期的なモニタリングによる早期発見が重要である.
・免疫チェックポイント阻害薬による心筋炎は致死率が高く,すみやかにステロイドパルス療法を開始する.
・心血管有害事象が発生した際の癌治療の継続の可否は腫瘍医と十分に話し合う.
Ⅰ.アントラサイクリン系薬剤による心機能障害
◆病態と診断
A病態
・無症候性の心機能低下から重篤な心不全まで幅広い臨床像を呈す.
・用量依存性に発生頻度が増加するため,生涯累積投与上限量は500mg/m2 である.
・投与後すぐに発症する場合や,数年後に発症するなど時期はさまざまである.
・心機能低下は不可逆的・持続的であることが多い.
B診断
・薬剤投与前に心電図,心臓超音波,BNPや心筋トロポニン測定を行い,循環器リスクを評価する.
・薬剤開始後はリスクに応じて定期的に心臓超音波,BNP,心筋トロポニン測定を行い早期発見に努める.
◆治療方針
通常の心不全と同様にステージや症状に応じて治療を行う(→,「急性心不全」の項,→,「慢性心不全」の項を参照).
中等度以上の心機能低下をきたした際には当該薬を中断する.軽度の心機能低下では適切な心不全治療下で当該薬の継続が可能な場合もあるため,腫瘍医と循環器医で討議する.
Ⅱ.HER2阻害薬による心機能障害
◆病態と診断
A病態
・無症候性の心機能低下から重篤な心