頻度 あまりみない
治療のポイント
・精神的・身体的ストレスを契機として発症することが多く,たこつぼ様の特徴的な左室形態を呈する.
・急性心筋梗塞に類似した症状や心電図変化を呈するため,急性期には迅速な鑑別が重要である.
・多くは数週間以内に自然軽快し予後良好であるが,重症心不全や致死性不整脈を生じる症例もあり,急性期には入院での観察が必要である.
◆病態と診断
A病態
・1本の冠動脈の灌流領域を越えて拡がる左心室の壁運動低下を生じる急性疾患である.
・典型例では心尖部の膨隆形態(バルーニング)と心基部の過収縮による特徴的な蛸壺(たこつぼ)様の左室形態を呈するが,左心室中間部など左心室の他部位や右心室に膨隆形態を生じるものもある.
・壁運動異常は数週間の経過で自然に軽快,消失するものが多い.
・カテコールアミンの関与などが示唆されているが,発症機序は不明である.
B診断
・高齢の女性(閉経後)に多い.
・肉親の訃報に接するなどの精神的ストレス,手術などの肉体的ストレスを発症の契機とするものが多い.
・典型例では急性心筋梗塞に類似した胸痛や呼吸困難感を訴えるが,非典型的な症状で心電図の変化が診断の端緒となるものも少なくない.
・心電図では超急性期に前胸部誘導のST上昇を認める.亜急性期にはST上昇は軽減し,T波の陰性化とQT延長を認める.典型例では発症2~3日で巨大陰性T波となる.異常Q波を生じるものもあるが,急性心筋梗塞に比べ軽度である.
・心筋バイオマーカー(心筋トロポニンなど)は上昇するが,左室壁運動異常の程度に比し軽度である.
・冠動脈造影では左室壁運動異常の原因となる狭窄病変を認めない.冠動脈の灌流領域が左室壁運動異常の拡がりと一致しない.
◆治療方針
多くは予後良好で,壁運動異常も数週間以内に自然に軽快,消失するが,重症心不全や致死性不整脈により死亡に至る症例もあり,急性期には心臓集中治療室(CCU