診療支援
検査

炭疽
平井 由児
(東京医科大学八王子医療センター感染症科教授)

病態

 炭疽菌(Bacillus anthracis)による人畜共通感染症である.皮膚・呼吸器・腸管・髄膜を対象とした異なる4つの病型に分類される.炭疽菌の産生する毒素により多彩な臓器への致死的な障害を呈する.バイオテロで用いられる可能性の高い病原体であり,2001年の米国では本菌が新聞社など複数のメディアに郵便で送付された結果,少なくとも22人が感染し,うち5人が死亡するという事件が起きている〔厚生労働省研究班:バイオテロ対応ホームページ(https://www.niph.go.jp/h-crisis/bt/disease/1summary/1images/),厚生労働省:「国内の緊急テロ対策関係」リンク集ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/j-terr.html),厚生労働省:炭疽が疑われる患者の診療のポイント(https://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1024-1.html),米国CDC:炭疽(https://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2020/travel-related-infectious-diseases/anthrax/)〕


異常値

 いかなる培養検査でもB. anthracisを検出すれば炭疽と診断できる.グラム染色では特徴的な細長いグラム陽性桿菌(Boxcar-like)が特徴である.

・遺伝子検査(保健所や専門施設が適応を判断) PCR法によりB. anthracis遺伝子を検出

・【肺炭疽】 胸部X線写真による縦隔リンパ節腫脹・胸水貯留

・【肺炭疽】 動脈血ガス分析による低酸素血症

・【髄膜炭疽】 髄液検査による髄液細胞数増加,髄液糖低下,髄液蛋白増加


経過観察のための検査項目とその測定頻度

 炭疽は病態により経過が異なり,生命の危機的状況では病態に応じたサポーテ

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