全身状態(general status)の診察では,全身の外観と精神状態を観察する.
顔貌
まず,顔全体,顔貌(countenance)を観察する.健常者の顔貌は,いきいきとした活気があり,表情も豊かである.これに対して,疾患によって特徴のある顔貌を示すことがある.患者の顔貌を観察することは,重篤な疾患であることを判断したり,特有な顔貌から疾患を特定するのに有意義である.
特徴的な顔貌
(図1)図
苦悶状顔貌
疼痛など強い苦痛があるとき,顔をしかめ,苦痛の表情をとる.これを苦悶状顔貌(painful)という.一見して苦痛の存在がわかる.
有熱顔貌
有熱顔貌(febrile)とは,高熱があるとき,顔面が熱のために紅潮している状態をいう.
無欲状顔貌
表情に活気がなくなり,眼光は鈍く,周囲に対して関心を示さない状態を無欲状顔貌(apathetic)という.敗血症,腸チフス,粟粒結核などの高熱を出す重篤な疾患や,精神疾患,脳疾患,中毒などの際にみられる.
仮面様顔貌
仮面様顔貌(mask-like face)とは,顔面筋が硬直して運動が減少し,表情が乏しくなって能面のようになった顔貌をいう.また,皮脂腺の分泌が亢進して脂ぎったような光沢を帯びた顔貌を膏顔(salve-like face)という.いずれもParkinson(パーキンソン)症候群に特徴的で,Parkinson顔貌という.
ヒポクラテス顔貌
ヒポクラテス顔貌(hippocratic face)は,消耗性疾患によって死期が近い場合,表情に乏しく,眼窩がくぼんで眼光が鈍く,頰がくぼんで鼻がとがってくる.古代ギリシャの医聖ヒポクラテスに因む.
満月様顔貌
Cushing(クッシング)症候群,あるいは副腎皮質ステロイド薬を大量に長期間服用している患者では,副腎皮質ステロイドホルモンの影響で顔全体が丸くなり,赤く,かつ多毛になる.顔が満月のよう