診療支援
診断

末梢血行異常
peripheral blood circulation disorder
矢崎 義行
(東邦大学医療センター大橋病院循環器内科)
中村 正人
(東邦大学医学部循環器疾患低侵襲治療学講座 教授)

末梢血行異常とは

定義

 末梢血行異常とは,四肢などの末梢動脈もしくは末梢静脈に狭窄あるいは閉塞をきたし,急性または慢性に血流の通過障害を起こしている状態を指す.狭窄,閉塞の原因はさまざまであり,動脈硬化が進行した場合や血栓により血行障害を起こす.

患者の訴え方

 急性の場合,患者は四肢末梢が「痛い」「しびれる」「触った感覚が鈍い」「皮膚が白くなる」「足が動かしづらい」「冷たい」「急に下肢が太くなった,むくんでいる」などと訴えることが多い.症状が突然であるか否かは医療面接で重要であるが,急性であっても発症が不明確なことが少なくない.原因によって症状の出現部位は異なり,下肢のみの場合であっても両側性の場合がある.

 慢性の動脈性の場合には誘因による痛みの増悪,「上肢を挙げるとだるくなる,疲れる」「歩くと足が痛くなってくる」などの間欠性跛行を訴える.静脈性では「むくむ」「だるい」など違和感の症状が多い.

患者が末梢血行異常を訴える頻度

 急性の動脈末梢血行異常の場合,約80%の患者は突然発症の症状を訴えるが,そのうち疼痛は約60%で,20%は冷汗やしびれを症状として訴える.一方,慢性の動脈末梢血行障害においては,歩行により下腿のふくらはぎに痛みを生じ,休憩で改善する跛行症状が典型的である.しかしながら,下肢閉塞性動脈疾患(lower extremity artery disease; LEAD)において間欠性跛行は半数以下であり,しびれなどの非典型的な症状や無症状のことのほうが多い.静脈の急性末梢血行異常の場合,片方の足全体やふくらはぎが急に赤黒く腫れあがり,痛みが現れる.数日をかけてゆっくりと進行することもある.

 慢性の下肢静脈瘤では,長時間の立位後に症状を訴えることが多く,約60%近くに疼痛,倦怠感,感覚の違和感を認め,10%弱に浮腫を訴えることがあるが,約20%近くは無症状であると報告

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