疾患を疑うポイント
●感染性腸炎,薬剤性腸炎,放射線性腸炎などの原因がなく,若年者に持続的で繰り返す粘血便がある場合,本症の可能性を考える.
学びのポイント
●患者数は急増している一方,根治療法が存在しないため,さまざまな治療法が開発されている.
●潰瘍性大腸炎の診断は本症に特徴的な臨床所見,画像所見,病理所見に加え,類似した症状を呈する疾患を除外することでなされるため,鑑別診断が重要である.
●好発年齢,典型的病変分布,画像所見をおさえる.
▼定義
主に大腸粘膜にびらんや潰瘍を形成する,原因不明のびまん性非特異性炎症性疾患.
▼病態
潰瘍性大腸炎の原因は解明されていないが,遺伝的素因,環境因子,免疫応答の異常,腸内細菌などが関与する多因子疾患であると考えられている.潰瘍性大腸炎の疾患感受性遺伝子解析では「腸管上皮バリア機能」に関与する遺伝子との関連が指摘されており,また,先進国に多く途上国には少ないため,食生活の欧米化や衛生環境の改善などが環境因子として考えられている.また,腸管内は無数の抗原に曝露される環境であるため,そのすべてに免疫応答が生じないよう免疫寛容機構が働いているが,潰瘍性大腸炎ではこの機構が破綻し,過剰な免疫応答が働くことで腸管炎症が生じる.さらに潰瘍性大腸炎においては,健常者と比較して腸内細菌叢が乱れていることが明らかになっている.一部の腸内細菌が特定の免疫細胞を誘導することも知られており,これらの因子が相互に関与することで潰瘍性大腸炎を発症する.
▼疫学
潰瘍性大腸炎患者は年々増加傾向にあり,日本における有病率は133.2(人口10万人対)である.欧米では286~505(人口10万人対)と報告されており,アジアより欧米で多い傾向がある.潰瘍性大腸炎患者は30歳代をはじめとした若年者に多く,性差はほぼない.喫煙者の発症リスクは非喫煙者よりも低いことが知られている.
▼分類
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