診療支援
診断

多毛症
Hirsutism
曽根 正勝
(京都大学特定准教授・糖尿病・内分泌・栄養内科)

緊急処置

 多毛症自体に緊急処置は必要ないが,副腎癌や卵巣腫瘍など早急に治療が必要な疾患の症候のこともあるので注意が必要である。

診断のチェックポイント

定義

❶体毛:男性ホルモンの影響を受けない無性毛(眉毛,睫毛,四肢の毛,側頭・後頭部の頭髪)と,男性ホルモンの影響を受ける性毛に分けられる

性毛は,男女両性に認められる両性毛(腋毛・陰毛下部など)と,通常は男性のみに認められる男性毛(口唇周囲・顎,前胸部,陰毛上部,下腹部,大腿内側,背部など)に分けられる。

両性毛は,副腎皮質や卵巣由来の少量の男性ホルモンの存在下で認めるが,男性毛は大量の男性ホルモンの存在によってうぶ毛から硬毛に変化する。頭頂・前頭の頭髪は,逆に,大量の男性ホルモンにより,硬毛からうぶ毛に変化する。

❷多毛症(hirsutism):男性型の多毛症のことを指し,女性や小児において男性毛が過剰に成長する状態であり,男性ホルモン過剰状態の症候となる。

【1】病歴:発症時の年齢と進展の急性度,肥満の有無,他の男性化徴候(無月経,声の低音化,陰核肥大,痤瘡,筋肉量の増加,頭頂・前頭の脱毛など)の有無の聴取が重要となる。また,薬物使用歴の聴取も必要である。

【2】身体所見

❶多毛の評価:多毛を認める部位,範囲を評価する。多毛の状態を9つの部位それぞれ0~4点で評価しスコア化するmodified Ferriman-Gallwey scoreが用いられる。白人では8点以上で多毛症と診断されるが,アジア人では3~5点以上でも多毛症と診断すべきとの報告がある。また,レーザー脱毛の既往にも注意する。

❷多毛以外の男性化徴候:無月経,声の低音化,陰核肥大,痤瘡,筋肉量の増加,頭頂・前頭の脱毛などの有無も観察する。

❸皮膚の診察:色素沈着,黒色表皮腫,痤瘡,腹部赤色皮膚線条,皮膚の菲薄化の有無の観察も行う。

❹肥満や満月様顔貌の有無も観察する。

【3】

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