診療支援
診断

呼吸困難
Dyspnea
木田 博
(国立病院機構大阪刀根山医療センター・呼吸器内科部長)

緊急処置

 急性の呼吸困難はエマージェンシーととらえ,バイタルサイン(意識状態,体温,血圧,脈拍,呼吸状態)のチェックに加え,経皮的酸素飽和度や血液ガス検査で,低酸素血症,アシドーシス・アルカローシスの有無を調べる。必要に応じ,血管確保,酸素投与などの処置を原因疾患の検索に優先させる。

【1】気道内異物

❶発症状況(食事中,食べ物を喉に詰まらせたなど),チョーキングサイン(自分の喉を親指と人差し指でつかむ仕草),努力性呼吸などから気管内異物による窒息と判断される場合は,腹部突き上げ法や背部叩打法により異物除去を促し,口腔内に目視できる場合は手指で異物を搔き出す。

❷意識がなくなった場合は気道確保を行うとともにマギール鉗子や気管支鏡で異物除去を試みる。

【2】アナフィラキシー:飲食,薬剤投与,虫刺され後などに発症し,じん麻疹や顔面の浮腫,喘鳴,血圧低下,消化器症状(嘔吐,腹痛)などからアナフィラキシーと判断される場合は,アドレナリン筋肉注射,静脈確保,ステロイド,抗ヒスタミン薬投与を行う。

【3】急性喉頭蓋炎:突然の発熱,強い咽頭痛,吸気性喘鳴を認め,急性喉頭蓋炎と判断される場合は,気管支鏡で閉塞の程度を診断し,気道確保に備える。

【4】気管支喘息急性増悪(発作)

❶短時間作用型β2アドレナリン受容体刺激薬吸入(重症の場合はアドレナリン筋肉注射),静脈確保,ステロイド点滴をすみやかに行う。

❷呼吸不全,意識障害を伴う場合は気道確保を行う。

【5】緊張性気胸:胸痛,息切れなどに引き続き,低血圧,頸静脈怒張,片側胸郭膨隆などをきたした場合,片側呼吸音消失,打診などで緊張性気胸と診断し,胸部X線検査を行う前に,穿刺による減圧を優先させる。

【6】肺血栓塞栓症:頻脈や血圧低下を伴い,循環動態が不安定で,抗凝固療法に加えて血栓溶解療法や血栓除去が必要となる場合は,循環器専門医へコンサルトする。

診断のチェック

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