緊急措置
緊急に呼吸状態を把握するには,頸部聴診法が有用である。音の大きさは換気量に比例するため,聴診音の大きさによって換気機能が評価でき,頸部ではいびき音,笛音,水泡音が胸部より大きく聴取できる。
診断のチェックポイント
肺聴診におけるチェックポイントを以下に示す。
❶聴診器はダブル・ルーメンのチューブを選択する。肺聴診では,膜型を皮膚に密着させるが,狭い領域や小児で皮膚への密着が不十分なとき,ベル型を皮膚へ強く押し当て膜型として使用する。
❷聴診部位は胸骨,脊椎,肩甲骨を避け,胸部の前面と後面で左右対称に聴診し,最後にゆっくりとした強制呼気で聴診する。異常所見は,聴診部位と肺音の種類を明記する。
❸正常呼吸音の名称は聴診器を置いた部位を示し,呼気に注意して聴診すれば,各々の特徴がわかる。
❹肺音は周波数の異なる音の集合体であり(複合音),英語表記は複数形とする(例:wheezes)。
●定義:肺音の国際分類を表1図に示す。
❶肺音は呼吸音と副雑音に分類され,呼吸音は呼吸に伴い必ず聴取され,副雑音は正常では聴かれない。
❷肺音の異常には,異常呼吸音と副雑音があり,副雑音は肺内由来のラ音(ラッセル音)と肺外由来の胸膜摩擦音やHamman徴候などがある。連続性ラ音は管楽器様,断続性ラ音は打楽器様の音である。
❸肺音の異常を理解するには,肺音の国際分類に基づいて,異常な肺音の種類を特定し,その発生機序を知る。
【1】身体所見
■呼吸音の減弱,消失,増強
・呼吸音の大きさは換気量に比例するため,換気障害で減弱・消失し,換気の増大で増強する。また呼吸音の伝播障害で減弱する。
・換気低下:慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),無気肺,気道閉塞,気胸,胸膜癒着,呼吸筋麻痺など。
・伝播障害:胸水,気胸,高度の肺