肺門・縦隔の正常像
【1】縦隔:胸腔内において,前方の胸骨,後方の脊柱,両側方の胸膜,肺,上方の胸郭上口,下方の横隔膜に囲まれた領域であり,気管・気管支,心臓,大血管,食道など重要臓器,縦隔リンパ節(#1~9)などがCT上,可視できる。
【2】肺門:気管支,肺動静脈,肺門リンパ節(#10,11)が認められる。
検査の適応
【1】肺門腫大や縦隔異常陰影は胸部X線やCTで認識される。疾患としては,縦隔腫瘍のほか,縦隔炎,サルコイドーシスや結核などの非腫瘍病変も考慮するべきである。
【2】縦隔腫瘍の症状:腫瘍による圧迫症状(咳嗽,呼吸困難,嗄声,喘鳴,胸部・背部痛,Horner症候群,上大静脈症候群など),胸腺腫などによる筋無力症や貧血,胚細胞性腫瘍の女性化乳房,神経原性腫瘍の高血圧など,各腫瘍による随伴症状が時にみられるが,多くは無症状である。
【3】縦隔病変の局在診断:胸部CT,MRIが有用である。腫瘍内の石灰化,歯牙の形成,囊胞性病変と充実性病変の鑑別など,性状診断や,病変の広がりも検索しうる。その他FDG-PETも有用で,悪性リンパ腫,胸腺癌など悪性度の高い腫瘍で高集積を呈する。炎症や良性腫瘍でもFDGの集積がある場合がある。
縦隔に発生する腫瘍
【1】縦隔病変の大きな位置を占める縦隔腫瘍は,縦隔に発生した腫瘍を指すが,気管・気管支,心臓,大血管,食道から発生した腫瘍はその臓器腫瘍として扱う。
【2】縦隔の上部:縦隔を胸骨格から第5胸椎上縁を結んだ線より上方が上縦隔とされ,胸腺,リンパ節,左右の腕頭静脈,上大静脈,大静脈弓,気管,食道,胸管,迷走神経,左下咽頭神経,心臓神経などが含まれる。
【3】縦隔の下部:縦隔の下部は前・中・後縦隔に3分割される。
❶前縦隔:胸骨から心膜の前部および腕頭血管の後部までで,前縦隔には胸腺の下部,リンパ節,脂肪織,内胸動脈の枝がある。前縦隔では胸腺由来の腫瘍,胚
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