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診断

リケッチア感染症(日本紅斑熱を中心に)
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Japanese Spotted Fever and other Rickettsial Diseases
馬原 文彦
(馬原アカリ医学研究所・理事長/馬原医院・院長(徳島県阿南市))

 日本紅斑熱は,紅斑熱群に属するリケッチア感染症(spotted fever group rickettsioses:SFGR)で,マダニ類により媒介される急性熱性発疹症である。

診断のポイント

【1】野山への立ち入りの既往。

【2】マダニとの接触歴。

【3】発熱,発疹,刺し口が3徴候。

【4】瘙痒感のない発疹。

【5】CRP陽性。

緊急対応の判断基準

 高熱の持続,意識障害,脳炎,心筋炎,播種性凝固症候群,多臓器不全。

症候の診かた(図1)

 2~8日の潜伏期を経て急激に発症する。

【1】発熱

❶急性期には39~40℃以上の弛張熱が多く,悪寒戦慄を伴う。

❷重症例では40℃以上の高熱が稽留する。

【2】発疹

❶高熱とともに手足,手掌,顔面に米粒大から小豆大の辺縁が不整形の紅斑が多数出現する。

❷瘙痒感,疼痛がないのが特徴的。

❸初期にはガラス圧により消退する。

❹すみやかに全身に広がる。

❺病初期の手掌部の紅斑は紅斑熱に特徴的な重要な所見である。

【3】刺し口

❶マダニ(図2)に刺咬された部位には「刺し口」がみられる。

❷定型的には5~10mmの赤く円い硬結で,潰瘍もしくは中心部に黒い痂皮を有する。

❸刺し口は臨床的な決め手になるので,下着で覆われたところや毛髪部位も注意深く観察する必要がある。

検査所見とその読みかた

【1】一般尿検査:蛋白,潜血軽度陽性。

【2】一般血液検査

❶特徴的な所見はないが,臨床3徴候に加えてCRP強陽性,血小板数減少,肝機能障害などがあれば日本紅斑熱を含むリケッチア感染症を疑う。

❷白血球数は基準値内のことが多いが,初期には増加傾向,病気が進めば減少し重症化する。受診までの時間に注意する。

確定診断の決め手

【1】間接蛍光抗体(indirect fluorescence antibody:IFA)法もしくは間接免疫ペルオキシダーゼ(immunoperoxidase:IP)法を行い,ペア血清で抗体価

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