診断のポイント
【1】感冒・胃腸炎様の前駆症状。
【2】心音減弱,奔馬調律,心拡大。
【3】心電図異常。
【4】心エコー図上,心機能低下,心囊液貯留。
【5】心筋逸脱酵素の上昇。
緊急対応の判断基準
小児で心筋炎が疑われたら,小児救命救急管理が可能な施設への搬送を考える。心不全と不整脈を適切に管理して,循環動態の破綻を防ぐ必要がある。
症候の診かた
【1】前駆症状:多くの場合に伴う。前駆症状としては感冒様症状(発熱,咽頭痛,咳嗽,関節痛,易疲労性など),消化器症状(食欲不振,腹痛,嘔吐,下痢など)が多い。
【2】聴診所見:心音減弱,奔馬調律を認めることが多い。僧帽弁閉鎖不全などの収縮期雑音を聴取することもある。
【3】心症状:心不全(頻脈,頻呼吸,起坐呼吸,浮腫,頸静脈怒張,末梢循環不全など),胸痛,動悸,Adams-Stokes発作などがみられる。
検査所見とその読みかた
【1】胸部X線写真
❶急性期に心拡大が急速に進行する例がある。胸水を伴う例もある。
❷一方,心拡大が目立たず間質性肺水腫と肺静脈うっ血が主体の重症例も少なくない。
【2】心電図:心室細動・心室頻拍12%,完全房室ブロック25%,心室内伝導障害12%,異常Q波46%,R波減高54%,ST-T変化95%などの心電図所見を認める。
【3】心エコー図
❶心囊液貯留,左室壁運動低下・一過性壁厚増加を認める。左房・左室拡大,拡張能低下,心腔内血栓,腱索断裂,房室弁逆流も重要である。
❷所見は数時間単位で変化するので,繰り返し検査することが肝要である。
【4】血液検査
❶AST,乳酸脱水素酵素(LDH),CPKなど心筋逸脱酵素の急激な上昇は診断に有効で,血中心筋トロポニンTの上昇は特異的である。
❷ウイルス分離は,便,尿,血液,気管分泌物などから可能である。
❸早期診断には特異的IgM抗体価の上昇が有用である。
確定診断の決め手
【1】前駆症状に続く心症状・心拡大