診療支援
治療

ジフテリア
diphtheria
吉良龍太郎
(福岡市立こども病院小児神経科・科長)

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[感]2類 [学]1種(治癒するまで)

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●病態

・グラム陽性桿菌のジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)による鼻・咽頭扁桃・喉頭または皮膚の感染症である.これらの部位の感染症状で始まり,続いて外毒素による心臓・神経系症状がみられる.

・発症者の飛沫,気道分泌物や皮膚病変への接触により感染する.無症候性保菌者による伝播もある.

・感染部位からの菌の培養および毒素の検出により診断が確定する.予防接種の普及のため先進国での発症はまれである.

A.呼吸器ジフテリア

・感染後2~5日で始まる咽頭痛,倦怠感,頸部リンパ節腫脹,発熱.頸部の腫脹は牛頸,喉頭の症状は真性クループとよばれる.毒素産生株の場合は,扁桃咽頭に偽膜が形成される.偽膜が声門や気管まで進展すると気道閉塞を起こす.

B.皮膚ジフテリア

・四肢に紅斑,滲出液,疼痛があり,さまざまな皮疹を呈する.

C.全身症状

・20~30%の患者に呼吸器症状から1~2週間遅れて毒素による心筋炎が起こる.まれに脱髄性多発神経障害が起こる.

●治療方針

 呼吸器ジフテリアに対して,ジフテリア抗毒素と抗菌薬で治療する.臨床的に疑わしければ確定診断を待たずに治療を進める.気道管理,心合併症のモニタリング,接触予防,フォローアップの培養も行う.回復後にワクチン接種が必要である.

A.ジフテリア抗毒素

 乾燥ジフテリアウマ抗毒素をなるべく早期に筋肉内(皮下)または時間をかけて静脈内に投与する.ウマ由来のため投与前に血清過敏症試験および除感作処置,また血清病に備えてアドレナリンなどの準備を行う.

Px処方例 投与量は感染部位と重症度によって異なる.

乾燥ジフテリア抗毒素

 軽症:1回5,000

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