●病態

・フラビウイルス科フラビウイルス属のジカウイルスによって起こる感染症である．主に蚊の媒介によって感染するが，それ以外の感染経路として母子感染，性交渉による感染，輸血による感染が報告されている．

・潜伏期は2～7日であり，5～8割は不顕性感染である．

・皮疹，結膜充血，関節痛，頭痛などの症状が特徴的である．ギラン・バレー症候群，脊髄炎，脳炎などの合併症が報告されている．

・妊婦が感染することで，児が小頭症などの先天性ジカウイルス感染症に罹患しうる．

・診断は主にPCR法による病原体の遺伝子の検出，またはIgM抗体の検出による．PCR法に用いる検体は血清（または全血），尿である．

●治療方針

　現在のところ，ジカウイルス感染症に対する特異的な治療はない．それぞれの症状に対し標準的な対症療法を行う．デング熱との鑑別ができていない時点では，非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）の使用は避けたほうがよい．

Px処方例

カロナール薬細粒　1回10～15mg/kg（成分量として）　発熱時頓用（4～6時間あけて）

・ジカウイルス感染症罹患後に筋力低下がみられた場合，ギラン・バレー症候群の可能性があるため神経内科へのコンサルトを行う．

・妊婦がジカウイルス感染症に罹患した場合，胎児の先天性ジカウイルス感染症の可能性があるため，感染症専門医のいる医療機関に紹介する．

・ジカウイルス感染症は重症化することはまれであり，罹患した患児自身はほとんどの場合に後遺症なく自然治癒する．

・国内で蚊が活動する春～秋に罹患した場合は刺されることで国内流行につながりうるため，発症から2週間程度は屋外での活動を控え，