診療支援
治療

肥大型心筋症
hypertrophic cardiomyopathy(HCM)
渡辺昌文
(山形大学医学部内科学第一講座・教授)

頻度 ときどきみる~よくみる(1,000人に1~5人)

GL心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)

ニュートピックス

・2022年4月にFDA(米国食品医薬品局)が,NYHA Ⅱ~Ⅲ度の成人閉塞性肥大型心筋症(HOCM)患者を対象に,病態改善効果が期待される心筋ミオシン阻害薬mavacamtenを承認した.

治療のポイント

・根本的な治療法は確立されておらず,心不全症状には対症療法を行う.

・閉塞性肥大型心筋症では,閉塞を解除する治療が重要である.

・致死性不整脈による突然死の予防,心房細動の治療が重要である.

・経過中に拡張相心筋症に病型が変化することがあるので注意する.

◆病態と診断

A病態

・日本では,HCMは,①左室ないしは右室心筋の肥大と,②心肥大に基づく左室拡張能低下を特徴とする疾患群と定義される.ただし,蓄積疾患や浸潤性疾患を含む他の心疾患や全身疾患に伴う左室肥大を呈する二次性心筋症は除外される.

・拡張型心筋症や拘束型心筋症などの,他の特発性心筋症と病態に重なりが存在する.

・肥大型心筋症は,主に形態から,次のように病型分類される.

 1)非閉塞性肥大型心筋症(non-obstructive HCM):以下2)~5)を満たさない病型

 2)閉塞性肥大型心筋症(HOCM:hypertrophic obstructive cardiomyopathy):左室流出路圧較差が,安静時または運動などの誘発で30mmHg以上となる病型

 3)心室中部閉塞性心筋症(MVO:midventricular obstruction):左室中部に著しい肥大を認め心室中部での内部狭窄がある病型.25%が左室心尖部瘤を形成し,心室頻拍の原因や,左室内血栓を合併することがある.

 4)心尖部肥大型心筋症(apical HCM):乳頭筋レベル以下の心尖部に限局して壁肥厚を認める病型.

 5)拡張相肥大型心筋症(D-HC

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