A.疾患・病態の概要
●AIDS(acquired immunodeficiency syndrome,後天性免疫不全症候群)は,1981年にアメリカのロサンゼルスに住む同性愛男性(ゲイ)に初めて発見され,症例報告された.ウイルスの分類上は,一本鎖RNAウイルスであるレトロウイルス科レンチウイルス属に属し,HIV-1とHIV-2の2つのタイプがある.
●わが国では1985年,初めてAIDS患者が確認され,当初は大半が凝固因子製剤による感染症例(薬害エイズ事件)であった.日本の新規HIV感染者数は世界でも特に少ない水準にあるが,先進国の中で唯一増加傾向にある.日本人は,同性間性的接触(男性同性愛)による感染が多く,ついで異性間性行為による感染が多い.一方,静注薬物濫用や母子感染によるものは少ない.
●2008年に新たに報告されたわが国のHIV感染者は1,126(男性1,059,女性67),AIDS患者は431(男性391,女性40)で,ともに過去最高であった
B.最初の処理
①救急外来を受診するHIV感染症には,HIV急性感染の症状で受診する場合や,HIV感染に合併した感染症を主訴に受診する場合,すでに診断されて治療中の患者が処方中の薬剤の副作用で受診する可能性などがある.
②また一方で24時間医療対応という点では院内や救急現場などで発生した針刺しなどの感染事故に対して対応するという場面も考えられる.
C.病態の把握・診断の進め方
1確定診断に近づくための観察・検査
①救急を受診した症状や問診内容だけでHIV感染を疑うかが最もポイントであるが,急性感染症でない限り,肉腫や慢性感染症,皮膚症状だけで救急外来を受診する可能性は高くない.HIV急性感染の症状で頻度が高いものは,発熱(90%),リンパ節腫脹(74%),咽頭炎(70%),発疹(70%),筋肉痛あるいは関節痛(54%)がある.HIVに感染
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