診療支援
治療

2 拡張型心筋症
dilated cardiomyopathy(DCM)
坂田 泰史
(大阪大学大学院教授・循環器内科学)

疾患を疑うポイント

●冠動脈異常を伴わない心拡大と左室収縮能低下.

学びのポイント

●「左室のびまん性収縮障害と左室拡大を特徴とする疾患群」であって,「基礎疾患または全身性の異常に続発した類似病態を示す二次性心筋症を除外したもの」.

●除外診断であり,二次性心筋症を精密に診断することが重要.

●薬物治療により心機能が改善しその後心不全を呈さない症例もあれば,初回心不全ですでに治療抵抗性で,心臓移植適応となる症例もある.非常に予後に多様性があるので,ガイドラインに沿った治療をすみやかに行うことがまず重要.

●予後不良と判断された症例は,すみやかに心臓移植施設と相談し,今後の治療方針を共有する.

▼定義

 日本では,DCMは,「左室のびまん性収縮障害と左室拡大を特徴とする疾患群」であって,「基礎疾患または全身性の異常に続発した類似病態を示す二次性心筋症を除外したもの」と定義されている.

 海外においては,左室収縮能が低下し,左室が拡大したもののうち虚血性心疾患,弁膜症を除いたものすべてが拡張型心筋症とよばれており,原因不明のものを「特発性(idiopathic)」とよぶことが多い.日本の「拡張型心筋症」はこの「特発性拡張型心筋症」に相当していることから,海外のデータを参照する場合については注意をする必要がある.

▼病態

 DCMの病因は,遺伝性と非遺伝性に分けて考えられるが,成人では両者の関与が考えられている.

遺伝性(家族性)

 DCMの20~30%は家族性である.DCMに関連しているとされる既知遺伝子については約40種類報告されており,心収縮に関連するサルコメア蛋白,細胞接着を担う蛋白,カルシウム調整にかかわる蛋白,エネルギー産生に関与する蛋白など多岐にわたる.しかしそれぞれの遺伝子変異の浸透率は高い(つまり,正常と思われる人でも変異をもっていることがある)ことが知られており,必ずしも遺伝子変異の

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