診療支援
診断

肺真菌症
††
Pulmonary Mycoses
掛屋 弘
(大阪市立大学大学院教授・臨床感染制御学)

 本項では肺真菌症のなかでも,Aspergillus属,Cryptococcus属,Mucor属を原因とする肺アスペルギルス症(pulmonary aspergillosis),肺クリプトコックス症(pulmonary cryptococcosis),肺ムーコル症(pulmonary mucormycosis)を概説する。

診断のポイント

 肺真菌症の診断のポイントは,宿主の状態と代表的な胸部画像所見を見逃さず,確定診断のために呼吸器検体(喀痰,肺胞洗浄液などの気道由来検体)より,真菌学的検査もしくは病理組織学的検査で真菌を証明することである。

【1】侵襲性肺アスペルギルス症(invasive pulmonary aspergillosis:IPA):長期間の好中球減少症状態やステロイド・免疫抑制薬が長期投与された免疫抑制状態患者に発症する。画像所見ではhalo signやair crescent sign(図1)などを呈する。

【2】単純性肺アスペルギローマ(simple pulmonary aspergilloma:SPA):陳旧性肺結核や慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)などの肺の基礎疾患を有する患者に空洞内の真菌球(fungus ball)(図2)や空洞壁の肥厚が認められる。

【3】慢性進行性肺アスペルギルス症(chronic progressive pulmonary aspergillosis:CPPA):同様の肺の基礎疾患を有する患者に,空洞周囲の浸潤影や空洞壁および胸膜の肥厚などが慢性の経過で進行する。

【4】肺クリプトコックス症:細胞性免疫抑制患者のみならず,健常人にも発症するが,宿主の免疫状態により結節影(図3a)や空洞影,浸潤影(図3b)など,多彩な陰影を呈する。

【5】肺ムーコル症:高度

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