●病態

・ポリオはポリオウイルスによる感染症で，急性灰白髄炎ともよばれる．ポリオウイルスには1～3型があり，野生株ポリオウイルス2型については2015年9月に，また野生株ポリオウイルス3型も2019年10月に世界から根絶された．2019年現在，野生株ポリオウイルス1型が流行しているのはパキスタンとアフガニスタンの2か国である．

・一方，伝播型ワクチン由来ポリオウイルス（cVDPV：circulating vaccine-derived poliovirus）による集団発生は依然として認められており，最近ではアフリカの広範囲な地域での急性弛緩性麻痺（flaccid paralysis），ラオス，パプア・ニューギニア，フィリピンなどでのVDPVによるポリオ流行が報告されている．

・日本を含むWHO西太平洋地域では2000年にポリオ根絶宣言がなされた．日本では1980年を最後に野生株ポリオウイルスは検出されていない．

・「急性灰白髄炎：ポリオ」は感染症法に基づく2類感染症に分類され，診断した医師は直ちに管轄の保健所に届け出ることが義務づけられている．

・ポリオウイルスは，経口感染後，小腸で増殖したあと多くは不顕性感染に終わるが，一部の症例では脊髄前角細胞に感染する．前駆症状（発熱，感冒様症状など）のあと，突然四肢に非対称性の弛緩性麻痺（flaccid paralysis）を生じ，その後，筋萎縮を残す．時に呼吸筋麻痺や顔面神経麻痺がみられることがある．

・小児に好発するが，免疫がなければ成人も発症する．野生株ポリオウイルスは経口感染する．ポリオウイルス以外にも，ポリオウイルスではない