診療支援
治療

深部静脈血栓症
deep venous thrombosis(DVT)
田中博之
(JR東京総合病院・救急部長)

A.疾患・病態の概要

●四肢の静脈は動脈よりも血栓症が起りやすい.Virchowの3主徴と呼ばれる,以下の3つのうち,いずれかの機序によって静脈の内腔に血栓が形成されると考えられる.

①血液凝固性の亢進・線溶能の低下:水分脱失,熱傷,ショック,赤血球増多症,嘔吐,下痢などによって血液が濃縮したり,粘稠になったりすると,血栓(泥状血栓sludged bloodと呼ばれる)を作りやすい.筋肉の損傷などで組織トロンボプラスチンが大量に遊離する場合や,血液疾患・癌などで血小板の破壊が起る場合も血栓が生じやすい.

②静脈血流の停滞:心疾患・衰弱・手術後などに右心系のうっ血が原因となって全身的に静脈の還流が遷延する場合,あるいは静脈中枢部を圧迫するような局所的な原因がある場合に血栓をつくりやすい.腸骨静脈は骨盤腔の最も後方に位置しているので,仰臥位では他臓器の圧迫を受けやすい(iliac compressi

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