診療支援
診断

喀痰
Sputum
井上 博雅
(鹿児島大学学術研究院教授・呼吸器内科学)

緊急処置

【1】呼吸困難やチアノーゼを伴う大量の喀痰:まず気道確保を行い呼吸不全の有無を評価する。

【2】低酸素血症を伴う場合:酸素投与を行い,原因を精査する。

診断のチェックポイント

定義

❶喀痰とは,下気道由来の分泌物が唾液とともに喀出されたものである。喀痰を伴う咳を湿性咳嗽とよぶ。

❷喀痰は,その肉眼的性状により,漿液性痰,粘液性痰,膿性痰に分類される。痰に血液の混じったものを血痰,血液が下気道から喀出されたものを喀血とよび,通常の喀痰とは区別して取り扱う(「血痰・喀血」項参照)。

❸漿液性や粘液性痰は正常でも産生されるが,気道粘膜の線毛運動により運搬され,咽頭へと移動し無意識のうちに嚥下されている。嚥下機能の障害を伴う場合には,下気道へ沈下した唾液が痰として喀出される場合もある。後鼻漏も,痰や湿性咳嗽の原因となる。

【1】病歴:喀痰に関する患者の訴えは,「痰量の増加」「痰が喉にからむ」「痰を出すために咳がでる」「痰が胸に詰まって苦しい」など表現は多彩である。

 下記の項目について聴取を行う。

❶喀痰の性状や量,持続期間,咳嗽の有無と持続期間,咳嗽や喀痰の日内変動。

❷喫煙歴。

❸発熱,喘鳴,呼吸困難,胸痛,鼻閉や鼻漏,嗅覚障害,嚥下障害などの随伴症状の有無。

❹鼻/副鼻腔疾患,心疾患,アレルギーなどの併存疾患の有無,既往歴の有無。

【2】身体所見

❶発熱を伴っていないか(→呼吸器感染症など)。

❷胸痛を伴っていないか(→肺炎や胸膜炎,咳による胸壁痛,肺癌などによる癌性疼痛)。

❸coarse cracklesを聴取〔→肺炎,気管支拡張症,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),びまん性汎細気管支炎など〕。

❹wheezesやrhonchiを聴取(→COPDや気管支喘息など)。

❺胸郭前後径の増大,胸鎖乳突筋の緊張亢進,Hoover徴候

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