診療支援
診断

レジオネラ症(在郷軍人病)
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Legionellosis (Legionnaires' Disease)
矢寺 和博
(産業医科大学教授・呼吸器内科学)

 レジオネラ症は,予後良好なポンティアック熱型と重症例の多い肺炎型(レジオネラ肺炎)とに分類され,ここでは主にレジオネラ肺炎について述べる。

診断のポイント

【1】急速進行性で重症の肺炎やβ-ラクタム系抗菌薬が無効な肺炎を診た場合に,まず,レジオネラ肺炎を鑑別に挙げることが重要である。

【2】意識障害や下痢などの多彩な症状や肝機能障害などの検査値異常を伴いやすく,浸潤影に比して低酸素血症が強い。

【3】胸部画像所見は,大葉性肺炎パターンで,非区域性の分布・浸潤影とすりガラス影との混在所見が主体である。

【4】β-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬が無効である。

【5】従来の血清型1のみならず,1~15のすべてを対象とした尿中レジオネラ抗原検査や気道検体からの核酸増幅法などを用いたさまざまな迅速診断法を試みる。

症候の診かた

【1】水系や塵埃などの感染源への曝露から発症までに2~10日前後を要する。

【2】多くは,全身倦怠感,頭痛,食欲不振,筋肉痛などで始まり,悪寒戦慄を伴った高熱,乾性咳嗽,胸痛,呼吸困難などがみられるようになる。

【3】最初は乾性咳嗽であるが,2~3日後には湿性咳嗽になり,膿性痰またはオレンジ色の痰を伴うようになる。

【4】急激に呼吸困難が増強することが多く,重症例では急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)へ移行する。

【5】意識障害,歩行障害,下痢,腹痛などを伴うことがある。

【6】敗血症,多臓器不全,腹膜炎,心内膜炎,蜂窩織炎,横紋筋融解症,腎機能障害などを起こす場合もある。

検査所見とその読みかた

【1】肺炎患者で,肝機能障害,高CK血症(横紋筋融解症による),低ナトリウム血症,低リン血症などが認められる場合にはレジオネラ肺炎を疑う。

【2】画像所見:非区域性の陰影の分布で,すりガラス影と気管支血管周囲の浸潤影

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