診療支援
治療

循環器疾患を理解するためのポイント
筒井 裕之
(九州大学大学院教授・循環器内科学)

ざっくりわかる循環器疾患

 循環器疾患には多様な疾患が含まれますが,主要なものとしては①虚血性心疾患,②不整脈,③心不全,④弁膜症,⑤先天性心疾患,⑥肺高血圧などがあります.これら6つの循環器疾患は特に頻度が高く,インターベンション治療や救急医療を必要とする重症例もあり,この領域の特徴をよく表した主要疾患といえます(図3-1).ただし,これらの循環器疾患は独立しているわけではなく,虚血性心疾患,弁膜症,先天性心疾患などを基礎疾患として,不整脈や心不全を合併したり,不整脈を原因として心不全を発症したりすることがむしろ多く,相互に関連しあっています.

 さらに,すべてではありませんが循環器疾患の多くが,高血圧,メタボリックシンドローム・糖尿病,脂質異常症などの危険因子リスクファクター)が動脈硬化を引き起こし,冠動脈疾患などの心血管病を発症し,心不全から最終的には死に至る一連の「心血管病の連鎖」ともとらえられます(図3-2).人口の高齢化,生活習慣の欧米化により,わが国においても冠動脈疾患,特に急性冠症候群と心不全が増加しています.

A 心血管リスクとしての生活習慣病

 高血圧,メタボリックシンドローム・糖尿病,脂質異常症などは「生活習慣病」とよばれますが,循環器疾患のリスクファクターとなります.これらの疾患の患者数はきわめて多く,心血管病予防の観点から,その適切な管理が求められるようになっています.

B 虚血性心疾患

 冠動脈疾患(coronary artery disease:CAD)は冠動脈支配領域の虚血によって生じる疾患で,虚血性心疾患(ischemic heart disease:IHD)ともよばれますが,狭心症と心筋梗塞に代表されます.狭心症は,心筋の酸素需要と供給のバランスが崩れる一時的な心筋虚血によって生じ,胸痛あるいは胸部圧迫感を主症状とする疾患です.安

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