診療支援
治療

感染症疾患を理解するためのポイント
藤田 次郎
(琉球大学大学院教授・感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科))

ざっくりわかる感染症疾患

 今回の編集にあたって,まず考えたことは,『新臨床内科学 第10版』というテキストの感染症の項目を,疾患別に捉えるのか,病原体別に捉えるのかということでした.臨床医向けの教科書であれば,例えば髄膜炎という診断名の項目を立て,髄膜炎をきたす病原体というとらえ方もできます.一方,本書第9版においては病原体別の分類がなされています.

 本書を用いるのが,主として医学生であること,また内科を学ぶのは,早い学年からに移行していることもふまえ,やはり病原体別に項目立てることにしました.ただし臨床的な視点も重要ですので,現在の感染症のトピックスなどを多く盛り込むように工夫しました.以下に感染症への理解を深めるために総論を記載します.ただし本書は感染症を扱っていますので,あくまでも臨床的な視点からの記載が主体になります.

A 押さえておきたい感染と感染症との違い

 感染症疾患を理解するためには,感染(infection)感染症(infectious disease)の違いを明確に区別する必要があります.特に「症」という言葉に留意します.「症」という言葉は「症状」から由来します.このため熱とか痛みなどの症状を伴うのが感染症なのです.言い換えれば「症」という言葉は,生体の反応が加わっていることを意味します.このため病原体の感染と宿主の応答の両者を含めたものが感染症です.一方,感染という言葉は,菌が体内には入ったものの症状を伴っていない状態です.筆者は呼吸器内科医であり,多くの結核患者さんに気管支鏡検査を実施しています.特に気管支結核という病気では,胸部X線写真で異常を呈さないこともあり,気管支鏡検査を実施して初めて診断できることもあります.例えば私の体内には間違いなく結核菌が入っている(感染している)のですが,私は肺結核を発症したことはありません(感染症にはなっていない).

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