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雑誌目次

論文

臨床検査11巻9号

1967年09月発行

雑誌目次

特集 小児の検査

小児骨髄像の特徴

著者: 中山健太郎 ,   青木継稔

ページ範囲:P.625 - P.627

小児正常骨髄像
 小児骨髄標本をみるにあたって,小児正常骨髄像についての認識が必要である。年令的差異があり,ことに乳児においてはいちじるしい。以下,小児骨髄細胞の形態学的特徴について若干の諸点をのべる。
1)裸核ないし胞体のせまいリンパ球様細胞がみられやすい。この傾向は,乳幼児に強く,分類上,リンパ球として数えられてはいるが末梢リンパ球とは異なる。小児期に多くみられるleucoblast型白血病の主細胞と非常に類似する点が多く,数の多いときは,同型白血病との鑑別に注意することが肝要である。また,リンパ球が幼若乳幼児なほど多く,年令の長するにしたがい,しだいに減少する。

小児の生化学検査

著者: 茂手木皓喜

ページ範囲:P.628 - P.634

はじめに
 小児の生化学検査といっても,検査法ないし測定法には何ら変るところはないのであるが,検査手技以外でいくつか成人とことなるところがある。これらのうちで,検査室側で考慮しなければならない諸問題について以下のべてみたい。
1)小児とくに未熟児,新生児では採血が困難なので,超微量測定ができるよう準備しておく。

小児期の末梢血液像

著者: 高橋正彦

ページ範囲:P.635 - P.640

 常に発育成長を続ける小児の血液像は,健康成人のそれと全く趣きを異にする。その年令的差異の最もはなはだしいのは新生児期,乳幼児期であって,その主役をなすものは淋巴球の数的質的な変動である。以下小児各期の血液像の特徴および主として日常遭遇することの多い所見について述べ最後にわれわれの教室で行なっている淋巴球の特殊な検索法について解説する。

小児ウイルス性疾患への螢光抗体法の応用

著者: 藤井良知 ,   時松昭

ページ範囲:P.641 - P.646

はじめに
 小児科領域において最も大きな比重を占める疾患は,第一に感染症である。そのうちで,臨床検査という立揚からみると,感染症でも細菌性疾患はすでに検査方法も一応確立し,これが小検査室にまで普及されているが,一方ウイルス性疾患に対する検査法はその歴史の新しさもさることながら設備と技術面に大きな投資を必要とするため,細菌検査ほどは実用化されていないのが現状である。また,臨床家の側から述べると,ウイルス性疾患はある程度まで臨床症状や流行の状態で診断が可能であることや,今までのウイルス分離や血清反応による検査法では診断確定までに時間がかかり,たとえ診断がついたとしてもその時にはすでに病気は回復しており,治療面には何ら役立たなかった経験などで,一部の臨床家以外からは敬遠されていたことも事実である。しかし,たとえばインフルエンザ初発患者の診定の場合とか,海外への住来が頻繁となった今日,天然痘と水痘との鑑別を至急必要とする場合4)にはどうしても迅速かつ正確性をもった検査法が必要となってくるのである。これから述べる螢光抗体法は臨床方面への応用も最近盛んとなり,これらの要求に十分答えてくれるその普及が望まれる技術である。螢光抗体法によると患者検体採取後早くて1時間,遅くとも数日以内に確定または鑑別診断が可能であり,小児科領域に特に多いウイルス性疾患へ応用することは有意義なことと思われる。

ウイルス疾患の補体結合反応

著者: 堀誠

ページ範囲:P.647 - P.652

はじめに
 補体結合反応は,今日多くのウイルス病の診断に対し,もっともしばしば用いられ,かつ有効な血清学的方法である。これは中和抗体の測定に比較すれば,より簡単に多数の検体を同時に,また多種類の抗原に対しても行ないうる。さらに中和抗体よりも早い病日に抗体を証明することができ臨床的にウイルス病の診断には最も一般化している。
 補体結合反応は,正しく測定されたいろいろの反応因子が,互に所定の量で作用した時,はじめて満足される成績がえられるので,反応因子と考えられる抗原,抗体,血球,溶血素,補体の吟味,保存法,試験方法などすべて本反応の目的にそって行なうのが重要である。疫学的調査の場合のように,目標がある限られた抗原にしぼられているときには,抗原の材料などにそれぞれに適した方法を考えなければならないが,臨床で用いる場合には,同じような症状をしめす疾患—たとえば,感冒様の症状をしめす疾患—から,特定の原因,たとえばアデノウイルス,エコーウイルス,コックスサッキーウイルス,ポリオウイルスなどをさがし出すために,またはある特定の疾患の罹患を否定—たとえば夏かぜ症候群の患者において,ポリオウィルスの罹患を否定—するために行なうので,実施にあたっては,できるかぎり多くの抗原を用いる必要がある。

乳児の糞便所見

著者: 本間道

ページ範囲:P.653 - P.658

はじめに
 乳児の糞便につき,消化の程度,色,下痢便,細菌学的所見などを具体的に説明するのが本文の目的である。
 乳児の糞便はただ肉眼でみることによって消化管の機能を臨床的に大まかに判定することができる。同時に臭をかいでみることが大切である。このような観察は,ベッドサイドで,排泄されたものについてただちに行なわれるべきであり,小児科医はそのように訓練されている。必要に応じては,採便管でとって,ただちにその性状をみることもある。

乳幼児の尿所見

著者: 神前章雄 ,   麻生治夫

ページ範囲:P.659 - P.663

はじめに
 乳幼児においては,尿の異常とか,排尿時の障喜などを,主訴とすることは,比較的少ないものであり,尿量がどうであるとか,尿の色が変っているとかは,相当年長児になっても気にしないことが多い。排尿時の疼痛などは,何らかの形で訴えることは,ある程度可能である。したがってルーチンとして検尿を行ない,尿の異常を発見することが多いが,より多くは病歴と現症を診て,尿を検査し,この所見を考察して診断をつけるものであり,この点から老えると,成人よりも,検尿の機会が多いといえるかもしれない。
 尿検査は,一般に成人と小児とは,その成績は本質的な差異はないが,測定値の年令的差異を呈するものがあったり,小児特有の疾患における診断的意義が,成人と異なる点がある。検査に関する書物は,立派なものが数多く発行されているので,ここでは,われわれ小児科医が日常遭遇することの多い場合について記すことにする。尿の所見から,どのようなことを老えるか,というように書き,検査と臨床の結びつきを,強くしたいと思う。

付表・小児における血清化学的成分の年令別正常値

著者: 大場康寛

ページ範囲:P.673 - P.676

小児血清化学的成分の正常値設定について
1)東洋工業株式会社従業員家族の0〜15歳までの乳幼児および小,中学校学童,生徒2,648名を対象にして,1966年夏(7月〜9月)と1967年冬(1月)に小児検診を行なった。(対照群は成人男女夏冬合計403名)。
2)小児検診では問診,診察,身体計測,胸部X線撮影,検尿,検便,末梢血検査,ツ反応,視力検査を行ない,その結果を小児科専門医が総合的に判定し,健康男女小児計2,143名を選別した(健康成人198名)。

カラーグラフ

小児骨髄像の特徴

著者: 中山健太郎 ,   青木継稔

ページ範囲:P.614 - P.615

 正常小児骨髄像は乳児期をのぞき成人と大差はない。疾患時の骨髄像の動き,変化には,ことに乳幼児期で成人と異なる若干の特徴がある。図に,重症感染症,溶血性貧血,鉄欠乏性貧血,白血病,神経芽細胞腫の骨髄転移像を示し,簡単な解説を加えた。

グラフ

小児の骨髄穿刺法

著者: 中山健太郎 ,   青木継稔

ページ範囲:P.617 - P.620

 成人では,骨髄穿刺は主に胸骨で行なわれているが,小児では主として腰椎棘突起が用いられ,これが不都合のときは,腸骨稜が用いられる。15歳以下では棘突起の背縁は化骨せず軟骨性で,穿刺が容易であるからである。穿刺部位は一般には,第3腰椎の棘突起を用いる。下部胸椎および第1〜第4腰椎はすべて穿刺に適するが,生後1年以下では第4腰椎の骨髄の発達が不十分なので用いない方が良い。

小児の脳波検査

著者: 吉井信夫

ページ範囲:P.621 - P.622

 小児の検査のうちでも脳波検査はもっともむづかしいものとされている。その理由は検査が長時間かかり,睡眠中を除けばその間患児の協力を必要とするからである。一口に小児というがその成長段階によって3つに分けられる。すなわち意志を全く通じることのできない,身体の自由がない乳児と,ある程度の疎通のできる幼児,よく此方の意志,命令をききわける小児などに分かれる。5歳以上でもときにききわけがなく検査に苦労することもある。
 この様に小児の脳波検査にはその年齢による特殊性に考慮を払わなければならないが,一般的事項として,検査前に親しくなっておき安心して検査を受けられる様にしておく,母親および家族の付添いは普通検査室内に入れた方が良い。根気よく患児に対して愛情をもって接する,といって我儘にさせることなく節度をもって(叱るべきことはやわらかく叱る)接する,などが必要である。このほか成人とは異った電極の配置,電極の接着法,ルーチンの記録法,誘発法などに種々の工夫が必要となる。

小児期の末梢血液像

著者: 高橋正彦

ページ範囲:P.623 - P.624

 血液像において年令的差異の最もはなはだしいのは新生児期,乳幼児期である。その代表例をいくつか示す。本文(635ページ)と合わせて御覧いただきたい。

座談会

小児検査の特徴

著者: 丹羽正治 ,   林陽子 ,   吉井信夫 ,   樫田良精

ページ範囲:P.664 - P.671

 小児の検査には,大人の検査にはない困難さが常につきまとうが故に,今日の発達した臨床検査の恩恵に浴されない面がある。客観的なデータに基づいた正しい診療が,あらゆる子供にも行なえる日が1日でも早く来るために検査室側で努力すべきことは何なのか。

検査室メモ

【乳幼児の採尿方法】

著者: 神前章雄 ,   麻生治夫

ページ範囲:P.640 - P.640

 乳幼児の採尿は,成人のようにコップで簡単にできない場合が多いが,われわれの小児科では,図のような採尿器を用いて,調子よくとれる。おむつの中にきれいな脱脂綿をあて,排尿後静かにしぼって検尿する場合もあるが,もちろん不完全である。
 導尿する場合のカテーテルは,乳児ではネラトンの3号,幼児では4号から5号を用いて,多くの揚合うまくできる。

捨てる前に

著者: 広明竹雄

ページ範囲:P.684 - P.684

 かつてのわれわれは,「靴の半張り」という熟語があるように,靴は底革を張り替えてはくもの,男子服は裏返しに仕立て直して着られるもの,と思い込んでいたし大多数の市民は,このような物を身に着けるのが常識であった。
 しかし現時点で,ティーンエジャーにこれを理解させることはおそらく不可能であろう。世は正に使い捨ての時代なのであるから……。科学の進歩は,量産と合理化による製品のコストダウンを促進し,その傾向は増々強まっているため,高い人件費をかけて修理するよりも,新品を買った方が安い上にニュータイプの使いよい物が入手できるようになった。この現象は,単に衣類などの身の廻り品にとどまらず,すでに自動車にまで波及している。また,われわれの職域で使用する器具類もその例外ではなく,シャーレ,スピッツグラス,注射針,メス,ハルンコップなどをはじめ,膿盆や試験管立にまで使い捨ての波が押寄せている。

入門講座 細菌

雑菌汚染の原因

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.677 - P.677

 無菌操作法は,細菌学的な実験へのパスポートである。これは,上水道の配管のように一連の操作の中で,雑菌をしめだすことである。どこか1カ所不注意な点があると,そこから雑菌がしのびこんでくるおそれがある。試験管の口をやくだけでなく,いろいろな準備が必要なのである。これについて考えてみたい。

血清

間接凝集反応

著者: 松橋直

ページ範囲:P.678 - P.678

 蛋白,多糖類,脂質などを抗原とする抗原抗体反応の中には,沈降反応や凝集反応をおこしても感度が弱かったり,また沈降反応や凝集反応の形式のものが見られないものがある。しかし,この反応系で,抗原を赤血球,あるいはそれと同程度の粒子に吸着させて抗体と反応させると明瞭に凝集反応の形式で,しかも高感度をもって観察することができるものがある。たとえば,結核症患者の血清とツベルクリン抗原との間では沈降反応はほとんど起こらないが,ツベルクリンを赤血球に吸着させ患者血清と反応させると凝集がおこる(Middlebrook-Dubos反応)。このように,抗原性をもつ物質を細菌ないし赤血球程度の大きさの粒子に吸着させてから抗体と反応させ,凝集反応の形で観察する方法を間接凝集反応(Passive agglutination,赤血球をもちいるときは,Passivehemagglutination)とよんいる。

染色液の種類と組成

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.679 - P.679

 血液の美しい染色標本を得るためには,正しく塗抹したのち,すみやかに染色することが大切である。また注意すべき点は染色液を稀釈する液のpHで,最適のpHは6.0〜6.8で弱酸性の方が美しく仕上る。たとえば下記のごとき燐酸緩衝液が用いられる。
1/15M燐酸一カリウム(KH2PO4)73.5ml+)1/15M燐酸ニナトリウム(Na2HPO4)26.5ml/pH6.4の燐酸緩衝液

生化学

フィルターのえらび方

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.680 - P.680

 フィルターといえば濾過器である。濾斗と濾紙で沈澱物と溶液とを濾しわける。空気のゴミを脱脂綿で除く。ガラス濾過器で溶液中の不純物を除く。どれもフィルターである。要するに混合物から不要のものを除き,必要のものを手に入れる操作である。
 ここにとりあげるフィルターは比色計に付属している光濾過板のことで比色分析を特定の波長の光について行なうために用いるものである。

病理

凍結切片

著者: 畠山茂

ページ範囲:P.681 - P.681

 凍結切片は,1)術中迅速組織切片作製,2)脂肪染色3)神経線維染色,4)組織化学および免疫化学など用途は広い。ルーチンに用いられている方法は一度ホルマリン固定をした組織片を氷結して一定の固さと抵抗力を与えた後薄切し水へもどした上で染色する。しかし4)では固定と氷結効果の検査対象に与える影響を考慮して未固定瞬間低温凍結を行ない−20℃のクリオスタット内で薄切しただちにスライドガラスに貼りつけ固定ないし染色へ移る。1),2)でもクリオスタットが常時使用できる体制にあるときは利用すべきであろう。3)は鍍銀染色であるから必ずしも推奨できない。
 ここではもっとも一般的なサルトリウス型ミクロトームによる方法について述べる。まず固定のすんだ組織片の支持台に乗せる面はできるだけ平面にする。この面に凹凸があるとあとでとれやすい。1)の場合は組織片をできるだけうすくし10%ホルマリン液で30〜40秒間沸騰するくらいまで加温固定する。組織片の大きさは2cm平方位まででそれ以上は切りづらくなる。

生理

テスターとその使い方

著者: 吉井信夫

ページ範囲:P.682 - P.682

 普通テスターと呼ばれているのは電気回路試験器のことで,スイッチを切換えることによって電流や電圧,抵抗などを測定できるようにつくられた測定器械である。一般にテスターの構造は図1のようで,可動コイル型メーター,分流器,倍率器,整流器,電池およびスイッチなどからできている。附属器具としてテストリード(赤と黒)がある。

各科共通

災害予防<2>—有機溶媒のあつかい方

著者: 内山照雄

ページ範囲:P.683 - P.683

 有機溶媒は合成有機化学あるいは分析化学などに広く応用されている。この中には脂肪族および芳香族炭化水素,ハロゲン化合物,アルコール,エステル,エーテルアルデヒド,ケトン,アミン,ニトロ化合物などの多数の化合物がある。臨床検査においても脂溶性物質の溶解や,ある種の物質の抽出などに用いられているが,有機溶媒の大多数が引火性であり,その上人体に対して毒性の強いものが多い点から,その取りあつかいには注意を要するものである。したがって有機溶媒のあつかい上留意すべき点は,まづ事故や災害に対する注意と,中毒作用に対する注意が主要なものとなるので,この点につき一般的なことについて述べてみたい。

研究

ベンチジン濾紙反応時間のその後の2,3の検討について

著者: 佐藤栄良治

ページ範囲:P.685 - P.687

はじめに
 ベンチジン濾紙反応時間とグアヤック反応との相関関係について,すでに前回(臨床検査1966年8月号)報告したが,その後において同一検体での繰返し誤差および連続検便の検討について実施し,所見を得たので報告する。報告に先立って若干の補足的な説明を記したいと思う。本方法は糞便め数ヵ所から少量ずつ取り濾紙に擦り込むような気持で薄く平等に塗布するが,厚すぎた場合塗布に使用したマッチ棒などの角で軽くかきとるようにして多すぎた便を取り除くと薄い塗抹が得られる(薄すぎても良くない)。ついでベンチジン酢酸溶液(上清を使用すること)を滴下し一定時間放置,ついでオキシドールを滴下してから反応が開始するまでの時間(秒)を読み取る方法で,数回の実習でほとんど個人差を認めない簡単なものである。以下同一検体での繰返し,および連続検便について報告し,諸賢の御指導を仰ぐしだいである。

比濁による血清総コレステロールの測定法(Kingsley法)の検討

著者: 川出真坂 ,   小田真也 ,   柚木光男 ,   奥山理 ,   川原重治

ページ範囲:P.688 - P.690

 Velu and Velu1)により創始され,後にKingsley2)らにより簡易化されたナトリウムエチラートによる血清総コレステロールの比濁測定法は,その迅速簡便性において従来の方法にまさり,実地診療あるいは,集団検査などの場合のスクリーニングテストに適した方法である。われわれは,この方法につき追試検討を行ない,さらにKingsleyの報告に記載のない混濁発生機転についても2,3の知見を得たので,その結果につき報告する。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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