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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査16巻6号

1972年06月発行

雑誌目次

カラーグラフ

超生体染色法による細胞鑑別—Brillant cresyl blue染色法

著者: 坂野輝夫 ,   坂井保信

ページ範囲:P.564 - P.565

 白血病における急性骨髄性白血病(AML)と急性リンパ性白血病(ALL)および,悪性リンパ腫における細網肉腫(RCSA)とリンパ肉腫(LSA)は薬剤感受性,生存期間,白血化率などに相違があるため鑑別診断は臨床上も重要である.細胞診における鑑別診断上有用と考えられるBrillant cresylblue超生体染色法(BCB)による核小体所見について述べる.方法はスライドガラス上に0.5-1%Brillant cresyl blueアルコール溶液を滴下し,ガラス棒で均等に薄い色素膜を作り,検体をカバーグラスの中央に1滴のせ色素膜上に軽く圧迫したあと,封入油浸で30分以内に観察する.それぞれの問題となる白血病細胞,肉腫細胞,癌細胞などの核小体を図1をもとに100個数え核小体像を作製し1型で50%を越える型がある場合はそれを表現型とし,1型が50%以下の場合は百分率の多い型から合計し50%を越えるに要する型を表現型として列記する.

技術解説

血液凝固検査

著者: 藤巻道男 ,   鈴木弘文

ページ範囲:P.567 - P.577

 出血性素因の原因はきわめて多彩であり,いまだに解明されていない点も多く存在している.しかし,現在のところ出血性素因の原因は毛細血管壁の異常,血小板の異常,凝固因子の異常,線溶系の異常の4つに一応大別して考えられている.したがって出血性素因を認める患者に遭遇した場合にはまずスクリーニング・テストによりこれらの4つの原因のどこに起因しているかを鑑別し,その結果に基づきさらに精査に進むべきである.また外科的手術などに際しても,術前検査としてスクリーニング・テストを実施し,いずれにも異常が認められないことを確かめてから手術を行なうことがたいせつである.
 スクリーニング・テストとしては比較的簡単に実施でき,しかも信頼度の高い検査法が選ばれることはいうまでもない.

ミネソタコードの使い方

著者: 小沢友紀雄

ページ範囲:P.578 - P.588

 近年,諸種循環機能検査法の発達とともに心電図は普遍化され,これを使用せぬ医師は少なく,これに携わる技師の数も増加している.一方,心電図のようなアナログ波形は,近い将来コンピュータによる自動分析が当然普及されてくるであろうし,そうなると,機械の誤りを正すためにも,医師のみならず,技師でも,かなり高度の心電図分析能力が必要となってくる.また現在においても判読の目的に合った,格調の高い,読みやすい心電図を撮影するためには,心霞図の分析が可能で,かつ種々の判定規準に精通しているのが望ましい.
 そこでまず当然のことながら,心電図の正常範囲を知らねばならない.しかし漠然と理解しているようで,正常値ほどむずかしいものも少ない.正常と異常の境界付近の判定では常に頭を悩ますところである.これに関しては,Simonsonら1-4)のすぐれた仕事があり,そのまとめでもある著書は,本邦にも日比野らの校訳5)によって紹介されている.

ブドウ糖負荷試験

著者: 本吉光隆 ,   池田義雄

ページ範囲:P.589 - P.595

 ブドウ糖負荷試験は糖尿病の診断法として広く利用され,成人病検査としてもその重要性はとみに増している.糖尿病を正しく診断し適切に治療するためには,糖尿病とはいかなる疾患であるかをよく理解し,診断のための検査も正しい方法で行なうことが重要である.ここでは,糖尿病についての考え方,糖尿病診断のすすめ方にふれたのち,経口ブドウ糖負荷試験の実施方法,判定基準ならびにその問題点について述べ,最後に糖尿病の早期診断のための集団検診と,最近注目されている腎性糖尿についても若干ふれることとする.

総説

世界の臨床検査の趨勢

著者: 石井暢

ページ範囲:P.596 - P.600

 医療が漸次個人プレイからチームワークによる医療へと移りつつあることは,だれしも実感として認めている.医療がこのように変貌しつつある最大の要因は疾患の解析がますます微分化され,多くの情報が集められるようになったことであろう.しかもその中心は臨床検査の発達によるものと考えられよう.
 医療はますますこの方向に進み,患者に関する情報はさらに増大することは明らかで,その情報量は一個人の医師の能力の限界を越えるとも考えられる.したがってその統合解釈にはコンピュータのみならず多くの医師の協力を要する.

臨床検査の問題点・41

緑膿菌の同定

著者: 五島瑳智子 ,   佐久一枝

ページ範囲:P.602 - P.608

一口に緑膿菌といっても,最近はピオシアニン産生のはっきりしない無色株の報告がふえている.しかしそれらも,アシルアミダーゼ試験などを行なえば同定可能である.今月は緑膿菌の同定をめぐって,いろいろな方法を検討することにした.(カットは緑膿菌の鞭毛染色)

ME機器の安全対策・6

ME機器を組み合わせて使用するとき

著者: 太田善久

ページ範囲:P.609 - P.613

 ME機器は日常の診療に多く使われ,医学の近代化に果たす役割はますます大きくなっているが,反面,膨大な臨床例の中には,装置の誤った使用や危険の状態の故障などで患者(または操作者)に電撃の危害を加えるおそれが多くなることが考えられる.
 手術室などで使用するME機器は,単独に使用しているときは安全であっても,他の機器を同時に使用したとき,思わぬ電撃事故を起こすことがある.

論壇

細胞診の今昔

著者: 高橋正宜

ページ範囲:P.614 - P.615

 臨床細胞学会および臨床病理学会の主催する資格認定試験も,1969年2月から開始されて現在まで189名のcytotechnologistが生まれた.これらの大多数の人々が活躍する病院や検査センターはもとより,細胞診を必要とする潜在余地も少なくないことを考えるとき,過去から未来への私見に紙面を割愛していただくことをお許し願いたい.

座談会

臨地実習の新しい方向

著者: 和田浩 ,   勝目卓朗 ,   丹羽正治 ,   森岡敏恵 ,   林康之

ページ範囲:P.616 - P.624

 検査技師にとって技術の体得は必須条件である.ところが,その技術を身につける実践の場としての実習病院が実習生の受け入れをやめるところが出ている.また,検査技師学校の修業年数が3年に変わりつつある現在,臨地実習をどのような方向へ進めていくべきか……学校,病院そして現場で教える技師に検討していただく.

レポート

SMA12/MICRO 1年の歩み—東海逓信病院の検査室

著者: 飯田勝利 ,   早川正義 ,   山下邦博 ,   後藤幸夫

ページ範囲:P.625 - P.630

 SMA(Sequential Multiple Analysis)―この略称はわが国の臨床病理分野においてもすっかり慣用語となり,すでに国内で40数台が稼動しているといわれる.
 SMAには生化学検査用と血液学検査用1)とがある.前者にはSMA 12/602),SMA 12/303),SMA 12/MICRO4),SMA 6/60があり,さらに12チャンネルにはそれぞれSurvey ModelとHospital Modelがあって,施設の性格にあった機種が選択されている.

特別インタビュー

イランのDr.Montakahbに聞く—検査技師学校の設立に情熱!

著者: 河合忠 ,  

ページ範囲:P.632 - P.634

 —モンテカーブ先生,本日はお忙しいところをわざわざ「臨床検査」のためにおいでくださいましてありがとうございます.
 先生はアメリカに長い間留学されたとのことですが,どのような教育をお受けになったのですか.

研究

K-寒天を用いた血清β-リポタンパクの比濁定量法—1.反応の基礎性状の検討

著者: 種村邦子 ,   佐々木禎一

ページ範囲:P.635 - P.636

はじめに
 リポタンパク(以下LP)が多糖類硫酸エステル類と不溶性の沈殿を生成し,その際生じた濁度からLP濃度を求める方法は,Bernfeldらのアミロペクチン硫酸法1),Oncleyらの高分子デキストラン硫酸法2),BoyleらのK-寒天法3)など数多く知られている.特に,K-寒天法は試薬の調製や操作の簡便さなどから,Houston4)らがこれに改良を加えて日常臨床検査への応用を可能にした.最近,われわれはHoustonらの改良法に関して反応の基礎的性状を追試検討したので,その結果を報告する.

微量全血培養による染色体分析法の研究

著者: 原一子 ,   土屋俊夫 ,   河野均也

ページ範囲:P.637 - P.642

はじめに
 1959年Lejeuneらによってはじめて明らかにされたダウン症候群の染色体異常の報告をはじめとして,クラインフェルター症候群,ターナー症候群,猫なき症など染色体分析を行なうことにより診断が確定される疾患が多数報告されて以来,臨床検査としての染色体分析検査が重要視されてきている.
 染色体分析に用いる標本の作製法も改良され,現在では,末梢血液の培養によるMoorheadらの方法1)が一般に用いられ,比較的手軽に行なえるようになった.しかしながら,このMoorheadの原法に従うと,多量の血液を必要とし,特に染色体分析検査の必要度の高い乳幼児期の患者については多量の採血が困難であり,十分な検索を行ないえないことが多かった.この点を改良すべく,使用血液の微量化についての研究も多数なされているが2-5),いずれも操作が繁雑であったり,微量化が不十分であり満足すべき方法とはいえなかった.

腎疾患患者における血清α2-マクログロブリンとそのタンパク分画について

著者: 宮谷勝明 ,   福井巌

ページ範囲:P.643 - P.645

 腎疾患患者における血清タンパクの研究は1917年にEpstein1)が塩析法を用いて分析しており,以来,免疫電気泳動法や免疫拡散法の開発に伴って一般化されてきた.このようなことから,最近,盛んに臨床面に応用され,血清α2-グロブリン分画の中に含まれるα2-マクログロブリンでは,腎疾患,特にネフローゼ症候群,肝硬変症,糖尿病2-4)などで増加することが知られ注目されるようになった.著者らはすでに肝疾患患者における血清IgGとそのタンパク分画との関係について報告5)を行なってきたが,今回は腎疾患患者における血清α2-マクログロブリンとそのタンパク分画の量的変動,およびその両者の関係についても検討を加えたので,その成績を報告する.

マイコプラズマの定量法の検討(2)—CFUに及ぼす希釈液について

著者: 中村昌弘 ,   松岡康恵

ページ範囲:P.646 - P.649

はじめに
 さきにわれわれ1)はマイコプラズマを定量する際のCFU (colony forming units)に影響する因子について種々の検討を加えた.すなわち,CFUが定量すべきマイコプラズマ材料を生食水で希釈した場合と,PBSで希釈した場合とで著しい差があること,またPPLO寒天の材料接種面を上にして培養するか,下向きにして培養するかでCFUが非常に変わることも明らかにして,そのメカニズムが何に由来するかの可能性をも考察した.
 今回はさらにマイコプラズマの希釈液についてやや詳しく検討を加えて,おおよそ一定の再現性あるマイコプラズマ定量ができる方法を確立したので述べたいと思う.

私のくふう

廃物利用の染色びん

著者: 大竹敬二

ページ範囲:P.645 - P.645

 現在の血液検査室は,自動血球計算器の出現で血球算定は困難でなくなり,今では血液塗抹標本の血球像所見が重荷となってきた.
 血液検査室に関するくふうも,この欄でたびたび発表され,特に染色台のくふうに立派な考案があり,おかげで以前のように,流しやバットを暗青紫色に染めずにすんでいる.

TPHA試験およびCRP試験毛細管法の観察箱の簡易な作り方

著者: 鈴木武雄

ページ範囲:P.649 - P.649

 TPHA試験の結果判定は,明るい部屋の実験台に白紙を敷き,その上にトレイを静かに置いて,反応中は振動を与えないで血球の沈下像を判定しているが,多忙な検査室で実験台にトレイを並べて最終判定まで静置することは,なかなかたいへんなことである.何かのはずみであっという間に動いてしまったことがある.また,部屋の片すみの台では採光条件があまりよくないので,判定に不都合な場合が多い.
 私は図に示すような,コンセントがある所なら手軽にどこにでも置ける間接透過光線利用の観察箱を考案した.また,CRP試験毛細管法の沈降物の判定にも使用できるようにした.材質はラワン材で厚さ10mm,高さ250mm,幅390mm,奥行上部220mm,下部は210mmの木箱であって,内部の底板に10W50Hz螢光燈器具2本を平行に並べて,色が正しく見える自然白色螢光燈10W/NLを取り付け,スイッチに接続した.内部は白色ペイントで塗装した.

新しい機器の紹介

青壮年男女における航ストレプトキナーゼおよびリウマチ様因子の保有状態について

著者: 斎藤富樹 ,   佐藤正之 ,   三谷善一郎 ,   船水孝介 ,   野村晃 ,   山内孜允 ,   馬場浩作 ,   田中繁 ,   山本英作

ページ範囲:P.650 - P.653

はしがき
 溶血性連鎖球菌(以下溶連菌と略す)となんらかの因果関係を有するであろう疾患に,1次的疾患として化膿性炎,咽頭炎,リンパ腺炎,中耳炎,猩紅熱などがありこれらは抗生物質の開発により漸次減少の傾向にあるとはいえ,おろそかにはできない.
 また2次的疾患ともいえる遅発性非化膿性続発症としてリウマチ熱,慢性リウマチ性関節炎,非関節リウマチとして急性腎炎,心炎などの続発疾患の重要性も欠くことのできない大きな問題である.1次的疾患の血清学的証明法としては,従来から患者血清中の抗ストレプトリジンO値(ASLO)の測定がもっぱら行なわれてきたが最近はその他,溶連菌の産生する酵素を測定する方法が併用され,すなおち抗ストレプトキナーゼ(ASK),抗ピアルロニダーゼ(AHD),抗ストレプトドルナーゼB(Anti-Dnase B),抗ディホスフォピリジンヌクレオチターゼ(Anti-DPnase)など,感染の存在を知るのに役だつ方法であるが,手技が困難でありASLOほど用いられていない現状である.

新しいキットの紹介

Sulfo-Phospho-Vanillin反応による血清総脂質定量用キットの検討

著者: 久城英人 ,   水口葉子 ,   福井巖

ページ範囲:P.654 - P.656

 血清脂質はコレステロール,リン脂質,トリグリセライド,遊離脂肪酸などに大別され,総脂質とはこれら各脂質成分の総和を意味する.
 血清総脂質の定量法は重量法,酸化法,比濁法,容量法,色素結合法,計算法,Sulfo-Phospho-Vanillin反応による比色法(以下,SPV法と略)などに大別される1)

霞が関だより・3

第2回臨床検査技師国家試験の"関係法規"から

著者: A.H.

ページ範囲:P.657 - P.657

 昭和47年3月19日に,第2回の臨床検査技師国家試験が行なわれた.この試験に「関係法規」に関し提出された問題のうちおもなものについて解説したい.
(問)臨床検査技師の行なう採血に関して誤っているものはどれか.

質疑応答

検査技師の資格を取るには……

著者: Y生 ,   H生 ,   J生 ,   本誌編集室

ページ範囲:P.658 - P.658

 問1 私は,現在検査の仕事に従事していますが学歴が中卒のため,検査技師学校へ行けません.どうにかして資格をとりたいのですが,研究会,スクリナーや学会などへ入会して資格を取ることはできないでしょうか.
 また,通信教育はないのでしょうか.

検査技師のための解剖図譜・6

脾・門脈

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.660 - P.661

1.脾臓(spleen)
 脾臓は左上腹部,上方は横隔膜に接して胃の左後方にある.大きさは,ほぼその人の手拳大といわれている.
 脾動脈は腹腔動脈より分岐し,膵の上縁に沿って走り,胃大網動脈と短胃動脈を分枝したあとに多くは3本に分かれて脾門にはいる.脾門からはいった動脈は静脈と分かれてマルピギー(Malpighi)小体のほぼ中心部を貫き,さらに分枝して筆毛動脈となり,次いで毛細管となって脾洞に注ぐ(図1).脾洞は脾髄の大部分を占め,互いに連絡しており,これから発した静脈は脾髄から脾柱内にはいり,脾門から脾静脈となって門脈に注ぐ.

検査機器のメカニズム・6

脈波計と心拍計

著者: 瓜谷富三

ページ範囲:P.662 - P.663

1.脈波
 心拍動によってそのエネルギーが波動となり血管に伝わるが,これを圧力変化として検出したものを圧脈波,血管の容積変化として検出したものを容積脈波と呼んでいる.圧脈波は前回の観血血圧計で検出記録するのに対し,容積脈波は下記のような方法で検出する.
(1)直接容積変化を検出する方法

検査室の用語事典

一般検査,血液学的検査

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.664 - P.665

32) Programming;プログラミング
 コンピュータ(電子計算機)で解こうとする問題を分析し,論理的に一定の手順に従って,コンピュータに指図することをプログラムと呼び,これを書く作業をプログラミングという.プログラミングに役だつ知識・技術を総称してソフトウェア(soft ware)とよび,計算機本体とそれに付属する伝送機器などを総称してハードウェァ(hard ware)とよぶ.

Senior Course 生化学

血中尿素(BUN)のUV測定法

著者: 坂岸良克

ページ範囲:P.667 - P.667

 臨床化学検査にUV法がそれほど多くない理由として助酵素NAD,あるいはNADP (酸化型と還元型のいずれも)が比較的高価であること,共役させる反応系の酵素が得がたかったことなどがあげられる.その傾向は紫外部用比色計の普及を遅らせる結果ともなり,各種物質のUV測定法がかなり軽視されていたきらいがあることは否めない.
 もちろん,日常検査のほとんどの項目は一応の精度および正確度を保っており,ことさらにUV法を取り入れなくても臨床の要望にこたえられるようになってきた.しかし,分析化学の立場からすると,比色法はモル吸光係数の明確な物質を扱う場合にのみ化学的意味があり,検量線のみを頼りとする比色定量は相対的分析法としての価値しかないことも事実である.

血液

血小板第3因子(2)—TGT法

著者: 安永幸二郎

ページ範囲:P.668 - P.668

 血小板第3因子の測定をトロンボプラスチン(トプ)形成試験(TGT)で行なうことの利点は,血液中の凝固因子の影響を受けずに血小板のトプ形成能を測定できることであるが,血小板浮遊液作製のための操作(洗浄および再浮遊)中に血小板を障害することが欠点である.われわれの検討でも洗浄液の上清中にかなりの第3因子能が認められている.つまりTGT法における血小板第3因子能を考えるには,(1)洗浄液に遊出した分は廃棄されること,(2)血小板浮遊液の第3因子活性は再浮遊操作で液中に遊出している第3因子との総和をみていることを念頭にいれておかねばならない.この場合問題になるのは血小板内の血小板第3因子量と,洗浄,再浮遊の操作中に血小板第3因子を遊出することに関係のある血小板膜の抵抗性(あるいは脆弱性)である.
 血小板のトプ形成能が不良の場合,血小板を破壊(超音波ないしは凍結融解による)したものでトプ形成能を測定して,破壊後もトプ形成が不良であれば血小板内の第3因子量(PF3-T)の欠乏(deficit thrombopathy)である.破壊後トプ形成能が正常であれば血小板第3因子の放出障害(functional thrombopathy)ということになり,真性多血症などはこの例である.この血小板膜の抵抗性はosmotic resistance test(Ultin;1959)で測定することができる.血小板膜の抵抗性は正常であっても血小板第3因子の放出障害がある場合があり(血小板無力症など),この場合はTGT法では一応正常であるが,カオリン法による血小板第3因子能で低下を認める.実際にはPF3-Tが正常で血小板第3因子能の放出による活性(PF3-A)の低下する場合が多い.

血清

IgE

著者: 稲井真弥

ページ範囲:P.669 - P.669

1.レアギンとIgE
 枯草熱,気管支喘息,食餌性アレルギーなどは迅速型の過敏症に属するが,これらの過敏症はアナフィラキシーやアルチュス現象などとは異なり,血中抗体は沈降反応などでは証明できず,Prausmitz-Küstner反応(P-K反応)によって証明される.P-K反応はある抗原に対し過敏症をもっている患者の血清を正常人の皮膚に注射し,数時間後同じ場所にその抗原を注射すると,その部に紅斑や腫脹を生じる反応である.このような過敏症をreagenic hypersensitivity,この過敏症にあずかる抗体をreagin (レアギン)またはreagenic antibodyと呼ぶ.
 reagenic hypersensitivityをもつヒトの血清から電気泳動法,イオン交換クロマトグラフィーなどでレアギンを分離していくと,レアギンの活性はIgAを含む画分に認められた.したがってレアギンはIgAに属する抗体であろうと考えられていた.

細菌

大腸菌の抗原成分—特にK抗原について

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.670 - P.670

 大腸菌属(genus Escherichia)は,その生物学的性状によりただ1つのsub-genus E.coliから成り,その分類は抗原構造の違いによる血清学的性状によって行なわれる.したがって,個々の菌種は,たとえばE. coli1:1:7,あるいはE. coli 111:8:12というというように記載されなければならない.そして,このような抗原構造の区別は,特に病原大腸菌と呼ばれる1群の大腸菌群を鑑別するのに重要であることは周知のとおりである.この抗原構造の記載にあたって,まず最初にO抗原が,最後にH抗原の性状が書かれているのであるが,真中に書かれた数字がK抗原と呼ばれる特殊な抗原の性状を記載したものである.
 これらの抗原成分について若干の注釈を加えると,O抗原は菌体成分であり,H抗原は鞭毛抗原であることはすぐに理解できるのであるが,K抗原と述べたときにまず思い浮かべるのは,たとえばKlebsiellaなどに存在する莢膜抗原(Kapsel Antigen, capsular antigen)を意味しているのであろうというのである.しかし大腸菌のK抗原は,決して莢膜の抗原成分のみを表わしているのではなく,少なくともエンベロープ(envelope)あるいは莢膜性抗原のどちらかを示しているのであって,しかも正確には前者はLとB,後者はA抗原と呼ばれてそれぞれ異なった性質をもつ成分を総括したものであることに注意しておく必要がある.

病理

硬組織と器械(2)

著者: 桔梗辰三

ページ範囲:P.671 - P.671

1.肋軟骨
 開胸あるいは胸骨を取り出すには,各肋軟骨はできるだけ硬骨部に近いところで切断する(図1).それには若年者で軟骨の石灰化の少ない場合はナイフで十分間に合う.成人の場合は肋骨剪刀や肋骨ナイフよりはむしろリノリウムナイフのほうが使いやすい.リノリウムナイフは適当な大きさ,厚さ,刃の曲がり方,硬さがある.刃先も適当に鋭く,肋間筋をあらかじめ別のナイフで切断しておく必要もなく能率的である.またとがりすぎて肺を傷つける心配もない.しかし鎖骨の切断はややむずかしい.軟骨もここが一番早く石灰化するので,症例に応じて道具を使い分ける必要がある.しかしほとんどの場合リノリウムナイフで十分である.

生理

計測用体表電極(3)—心電図測定用電極

著者: 坂井澄雄

ページ範囲:P.672 - P.672

 心臓の起電力の変化を時間経過に従い記録した波形を心電図といい,この起電力の誘導に用いる電極が心電図用電極である.

業務指導のポイント

Bacteria That Can Be Isolated and Aren't

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.673 - P.673

 臨床所見などから考えて,分離されるはずの病原菌が分離されないことは,時々経験されることである.このような場合,なぜ分離されなかったかを確認しておくことは重要である.時には,その菌が分離されなかったことで,細菌検査室の信頼性を失うこともあるからである.その原因について,順を追って述べる.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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