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雑誌目次

論文

臨床検査3巻10号

1959年10月発行

雑誌目次

グラフ

脳波をとるために必要な知識

著者: 塚原進

ページ範囲:P.543 - P.549

 脳波をとる人は脳波をとる前に心電図をとつてみて心電計になれておくとよい。心電計に関する知識があると脳波計の場合に大へん役立つからである。例えば接地とかスイツチとか較正とか,共通のいろいろな概念を簡単に理解できるようになるからである。電極とその装着法や電極間の抵抗に関する知識はこの種の検査には最も必要で特によく知つておく必要がある。
 心電計と脳波装置は同じ増幅器と記録装置からできているが,脳波装置はふつうの場合であると心電計を8組以上集めたものであり,しかも脳波計の方が感度をよけいに必要とするために増幅段数が多く,真空管がそのために数本多くなつている。記録方式も全く異なり,心電計は写真式か,熱ペン式であるのに脳波計はインク書ぎが大部分でペンの長さもちがう。記録装置のちがいは,心電図と脳波では電気的な条件がちがうからである。しかし脳波計の1つの素子と心電計をくらべてみると,電極をつなぐ所(A)感度を調節するつまみ(B)電極の組合せをかえるつまみ(C)ペンの位置を調節するつまみ(これのない脳波計もある)電源スイツチ(F)は何れも共通にある。心電計にないものとしては全体の感度を変えるつまみ(G)電極間の抵抗を測る部分(H)フイルターのスイツチ(I)時定数をかえるスイツチ(J)などがある。これらのものが8ないし12組集ると大へん大きなものになり,操作も難しいのではないかと思うかもしれないが実際に多く使用するのはAよりFまでで心電計と変らないことになる。本質的に脳波特有のものはない。

血液塗抹標本の見方(その4)—胸水腹水などの細胞

著者: 天木一太

ページ範囲:P.550 - P.550

技術解説

好塩菌について

著者: 相磯和嘉

ページ範囲:P.551 - P.555

好塩菌の概念
 好塩菌とはhalophile, halophilic bacteriaの日本語訳であつて字の示すように食塩を好む一群のバクテリヤの総称である。
 細菌の系統分類学上の術語ではないので球菌あり,桿菌あり,ビブリオあり,分岐する菌まで含まれている。

キエルダール法(臨床分析における)

著者: 佐藤徳郎 ,   福山富太郎

ページ範囲:P.557 - P.560

 キエルダール法の原理は有機物を濃硫酸とともに高熱し,その中に含まれるすべての窒素をアンモニアに変えることであり,いろいろな方法1)**が研究紹介されている。大量法と微量法とがあるが臨床分析では微量法によるのがよく,それは検体の採取量が比較的少量でよいから,試薬の使用量もそれに応じて減り,時間的にもはやくはかれるなどの点で有利である。

対談

血液塗抹標本の見方(その4)

著者: 天木一太 ,   杉山幸子

ページ範囲:P.561 - P.563

4.胸水,腹水などの細胞
 天木 胸水,腹水,心嚢液中の細胞は,もちろん血液の細胞とはちがうわけですが,一部は血球であり,他も血球に非常にちかい細胞で,実際上われわれがしばしば鏡検しなければならないので,ここに取りあげることにしました。胸水や腹水の標本をつくることも血液の塗抹標本の場合以上にコツがいりますので,例によつて標本作製上の注意からはじめましよう。
 杉山 新鮮な採取したばかりの胸水や腹水から標本をつくることが大切と思います。検査のうちまず生化学検査が行なわれて,数時間から半日,どうかすると翌朝になつてから生化学室から血液室に検体がまわつてくるようなことがありますが,こういうときには,赤血球と小数のリンパ球しかみられないようなことが多くあります。

座談会

薬品事故の処置

著者: 赤星三彌 ,   山田実 ,   徳田久彌 ,   松村義寛 ,   松橋直 ,   太田邦夫 ,   天木一太 ,   高橋昭三 ,   樫田良精

ページ範囲:P.564 - P.574

多い有機溶媒による火災
 樫田 きようはみなさんお忙しいところをお集まりくださいましてありがとうございます。きようの座談会の主題の薬品事故は,臨床実験室ではしばしば起る可能性があり,また起しているところもあると思うのですが,そういう場合どのような処置をしたらいいか,どういう場合には事故が起りそうだから,どういう予防をしたらいいか,いろいろな御注意をひとつ技術者のために,わかり易く,具体的にお話ねがいたいと思います。最初に話のいとぐちを出すという意味で,いちばん関係のふかい生化学室の松村先生に,こういうものがいちばん遭遇しやすいというお話をねがいます。それから赤星先生に,薬学部の研究室の立場からお願いします。
 松村 頻度がいちばん大きいのは,もちろん酸アルカリが目に飛沫となつて入つてくるような事故,その次には有機溶媒に火をつけるようなこと,そんなところじやないですかね。

新しい検査法

�酔い�と血中アルコール濃度との関連性

著者: 秋谷七郎

ページ範囲:P.577 - P.581

緒書
 戦後,とくに昨今の自動車その他の交通事故禍は目にあまるし,年々歳々といわず日に日に激増していることはいうまでもない。東京都内で平均交通事故死の数が1日数人におよび軽重傷者数も数十人におよんでいる。その事故の原因は無謀自動車運転によるものが多いが,中でもアルコールによる酔運転も見のがすワケにはゆかない。
 筆者は1951年に東大医学部薬学科裁判化学教室で教室員と同学医学部の法医学教室の野田金次郎博士その他の研究員と協力のもとに呼気中および血中のアルコール濃度との関係,さらには,これらのデータと成人の"酔度"とのあいだに何かの関係があり,その関係が比例的に成り立つか否かを検討した。特に日本人について諸外国人のものとどんな差があるかを知ろうとして人体実験を行なつた。

研究

結核菌分離培養における3%小川法と中和法の比較について

著者: 一言広 ,   松崎広子

ページ範囲:P.583 - P.586

 結核菌分離用および耐性検査用培地は従来各種の培地が考案され実用化されてきている。しかし未だ大多数の検査機関においては小川および岡・片倉の両培地が使用されており,これらの培地を用いての種々の変法も行なわれてきている。諸外国では,なお,中和—Löwenstein培地法が多く用いられているようである。また,1%小川培地,岡・片倉培地を用い中和接種を行なつて,NaOH−3%小川培地法との比較を行なつた報告はないようである。われわれは長いあいだ,岡・片倉培地を用い,中和接種法によつて検査を行なつてきたが,方法および培地の選定をすべき機会に立ちいたつたので日常検査上の誤差も含めてこれらの点につき,比較検討を試みて,多少の知見を得るにいたつたのでここに諸氏のご批判を仰ぐべく,ご報告する次第である。

『医学常識』

心臓のはなし

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.587 - P.592

I.心臓の構造と機能
 心臓は胸廓のなかで中央よりやや左側に位置し,両側から左右の肺にかこまれ横隔膜の上にのつています。大きさはにぎりこぶしよりやや大きい程度で全体が厚い筋肉の壁からできています。この筋肉は四肢をうごかす筋肉(横紋筋)と血管や腸管の壁にある筋肉(平滑筋)の両者の性質をかねそなえているような特殊な筋肉で心筋とよばれます。この他心臓には特別な幼若な筋線維がふくまれこの筋線維は心臓のなかでおこつた刺激を上から下に伝える役目をするので,刺激伝導系とよばれています。心臓は肺と同じように表面が2重の膜でつつまれており,これを心嚢といいます。
 心臓は上下左右の4つの部屋にわかれています。左右の心房と心室がそれです。心房と心室,心室から大きい血管への出口にはそれぞれ弁があつて血液が逆流しないようになつています。心臓の役目は全身に血液をおくり,血液のなかにふくまれている酸素,栄養素,ホルモン,ヴイタミンなどを体内の各種臓器,組織におくりこみ,老廃物をうけとつてからだの外におくり出してやることです。図1でおわかりのように全身をまわつた血液は上下大静脈に集められ右の心房におくりこまれます。ここから右の心室に入り肺動脈によつて肺におくられ肺でCO2をすて02をとりいれて(肺のはなし参照)きれいな血液(動脈血)となり肺静脈をとおつて左の心房にもどり,左心室から大動脈を通じて全身におくりだされます。

読者の頁

検査技術者のなやみ—とくに細菌検査をめぐる問題

著者: 佐藤乙一

ページ範囲:P.593 - P.596

まえがき
 戦争を終えてまもなく14年めをむかえる。臨床検査法も昭和20年からその後2,3年頃と比較すれば,じつに進歩したものだとしみじみ考えさせられることが多い。
 臨床検査というものが,今日のように重要視されていなかつたにもかかわらず,依頼されたものを検査するには,培地の調製から試薬の調製など,基礎となるものを作りあげるにも,非常な苦労を重ねたものである。とくに,その頃の物資不足から,1つの薬品を探しまわるだけでも,口や筆にはあらわし得ないほど骨折があつたことはいうまでもない。検査器械なども,質がわるく,検定がないため,量目もでたらめで,何ひとつをとつても満足すべきものはなかつたというのが,いわゆる戦後2,3年ごろの実情であつた。

連続定量培地分注器の一考察

著者: 坂本雅是 ,   大竹豊彦

ページ範囲:P.597 - P.598

緒言
 近来,医学の発達に伴ない臨床検査法は急速に進歩してきた。その一部門たる細菌検査の領域にも高度の技術,知識が要求されているが特に,細菌性疾患における化学療法の結果生じた病源菌の抗薬剤性がクローアツプきれるにおよんでその耐性測定はわれわれ臨床検査にたずさわる者にとつて重要な仕事となつている。従来,培地の試験管分注に際してその容積はおおよその量で満足されてきたが細菌の耐性測定時などには培地の量にも相当の厳密さを必要とされるにいたつた。このような事柄を考慮に入れて培地分注に際しての必要,充分な条件を列挙すると,1.容積をかなり正確に秤量できること。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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