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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査62巻6号

2018年06月発行

雑誌目次

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査

著者: 山内一由

ページ範囲:P.683 - P.683

 少子高齢化は誰もが気掛かりな社会問題です.少子化については対策を講じればある程度歯止めをかけることができるかもしれませんが,高齢化はもっと難しい問題のように思えます.医療とその進歩が長寿という恩恵をもたらし,今の高齢化社会を作り出してきた一因でもあるからです.

 しかしながら,高齢化がさらに加速化したとしても,多くの高齢者が健康長寿を全うし,生涯にわたって活動的に過ごすことができるようになれば,危惧されている社会保障制度の破綻を食い止めることができるはずです.健康長寿の実現は,医療が追求すべき最重要課題であるといっても過言ではありません.

 丈夫な骨は,健康長寿の最も重要な必要条件の1つです.骨の機能として,まずは支持・運動機能が挙げられますが,他の臓器と同様に多彩かつ重要な生理機能も担っています.まさに,骨は健康を支える“屋台骨”といえます.

 本特集を通じて,骨がつかさどる生理機能の奥深さを学んでいただき,骨関連の臨床検査への理解を深めていただけたら幸いです.

骨代謝の基礎と骨の機能

著者: 福本誠二

ページ範囲:P.684 - P.687

Point

●骨は,破骨細胞による骨吸収と,その後,骨吸収部位に骨芽細胞による骨形成が起こるという骨リモデリングを繰り返している.

●骨量が維持されている場合には,骨吸収量と骨形成量は釣り合っている.これを骨吸収と骨形成のカップリングと呼んでいる.

●骨は,硬組織として身体の保持や内臓・中枢神経系の保護に貢献することに加え,造血,免疫系やミネラル代謝の維持などにも必須の役割を果たしている.

骨免疫学

著者: 浅野達雄 ,   高柳広

ページ範囲:P.688 - P.694

Point

●骨免疫学は,骨と免疫の相互作用や共通の制御機構を研究する新規学際領域として発展してきた.

●骨と免疫系は,サイトカインRANKLなどさまざまな制御因子を共有している.

●骨と免疫の相互作用は,関節リウマチにおける骨破壊をはじめ,骨折治癒や骨髄造血など,さまざまな生理的・病理学的現象に関与している.

骨代謝マーカーの使い方・読み方

著者: 竹内靖博

ページ範囲:P.696 - P.703

Point

●骨代謝マーカーには骨吸収を反映する指標と骨形成を反映するものがあり,使用の目的や検体採取方法が個々に異なるので,適切な検査項目を選択することが大切である.

●骨吸収マーカーは,コラーゲンの代謝物もしくは破骨細胞に特異的な酵素である酒石酸抵抗性酸ホスファターゼである.

●骨形成マーカーは,骨芽細胞から分泌される骨基質蛋白およびその断片もしくは骨芽細胞に特異的な酵素である骨型アルカリホスファターゼである.

●骨代謝マーカーの測定が有用な疾患は,骨粗鬆症,骨軟化症,骨Paget病などの代謝性骨疾患と,副甲状腺機能亢進症など骨代謝に大きな影響を与える内分泌疾患などである.

骨粗鬆症

著者: 鈴木勇人 ,   今井教雄 ,   遠藤直人

ページ範囲:P.705 - P.710

Point

●骨粗鬆症は骨強度が低下し,骨折リスクが増大した状態である.骨強度は骨密度と骨質の2つの要因からなる.

●骨粗鬆症の診断には,骨密度の測定やX線検査などで脆弱性骨折の検索をするだけでなく,血液検査や尿検査などで骨粗鬆症を続発する他疾患の検索や除外が重要である.

●骨粗鬆症の治療の目的は,骨折の予防と健康な骨格の保持である.個人の骨折危険因子に加え,骨代謝マーカーなどで骨代謝回転状態および病態などを評価し,治療法・治療薬を選択する.

内分泌・代謝疾患と骨疾患

著者: 山内美香 ,   杉本利嗣

ページ範囲:P.712 - P.717

Point

●原発性副甲状腺機能亢進症(pHPT)は,続発性骨粗鬆症をきたす内分泌疾患のなかでも頻度の高い疾患であり,手術治療によって明らかな骨密度増加効果と骨折抑制効果が示されている.

●副甲状腺機能低下症は,副甲状腺ホルモン(PTH)不足性副甲状腺機能低下症と,標的臓器のPTH作用障害による偽性副甲状腺機能低下症に大別される.PTH不足性副甲状腺機能低下症では,骨密度は高いが骨折リスクが高まるとされる.

●くる病,骨軟化症は,骨石灰化障害を特徴とし,骨量低下をきたす疾患である.病因によって治療法が異なるため鑑別が重要である.

CKD(chronic kidney disease)とMBD(mineral bone disorder)

著者: 中川洋佑 ,   深川雅史

ページ範囲:P.718 - P.722

Point

●慢性腎臓病(CKD)早期から骨・ミネラル代謝異常(MBD)の病態は進展している.

●CKD-MBDは全身疾患であり,血管石灰化の進展に伴って生命予後に深く影響を与える.

●血清リン,カルシウム,副甲状腺ホルモン(PTH),アルカリホスファターゼ(ALP)などを定期的に測定し,治療介入に結び付けることが肝要である.

今月の特集2 筋疾患に迫る

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.723 - P.723

 私たちが日ごろ経験する筋肉痛,脱力は,多くは疲労や不活発によるもので,きつめの運動後のCK上昇以外は臨床検査で異常がでるほどのものではありません.それでは,筋に異常をきたす病気にはどんなものがあるでしょうか.

 今回は,病因に共通点は少ないものの,筋と名の付く代表的疾患をまとめて取り上げました.その領域を代表する臨床家の方々に執筆いただき,迫力のある内容となっています.まずは,それぞれの疾患の概念,診断,治療という全体像を把握してみてください.筋が萎縮する,筋やその周囲に炎症が起こる,神経からの刺激が入らない,筋が崩壊する,とはどういった病態なのか理解に努めてください.臨床検査の視点からは,筋逸脱物質であるCKやミオグロビン,炎症マーカー,筋萎縮に伴う筋電図異常など,従来の検査の位置付けを再確認してください.自己抗体が関与する疾患では,病像と強く関連する自己抗体が新たにラインアップされていますので,新しい知識も加えていただけたら幸いです.

先天性筋疾患—筋ジストロフィーを中心に

著者: 松村剛

ページ範囲:P.724 - P.731

Point

●確定診断は遺伝学的検索・免疫学的検索が主となるが,臨床学的鑑別による適切な絞り込みが重要である.

●心筋障害・呼吸・嚥下障害が予後に大きな影響を与え,これらは末期まで自覚症状が乏しいため,定期的評価によって適切な介入時期を逃さないことが重要である.

●呼吸不全は就寝時から出現するため,睡眠時呼吸検査が重要である.

●心機能指標は一般に比べ異常を呈しにくいため,複数の指標を用いて多角的に評価することが重要である.

皮膚筋炎・多発性筋炎

著者: 上阪等

ページ範囲:P.732 - P.739

Point

●1992年策定のわが国の診断基準が2014年にアップデートされた.皮疹が再定義され,針筋電図と自己抗体所見内容が改訂され,無筋症性皮膚筋炎(ADM)が診断可能となった.

●特異的自己抗体が検出されにくい疾患であったが,多くの筋炎特異的自己抗体の発見によって,ほとんどの症例で特異的自己抗体が検出されるようになった.

●副腎皮質ステロイド薬単独療法から免疫抑制薬併用治療へと,治療の主流が変化しつつある.特に急速進行性間質性肺炎合併例では,当初からの併用が必須とされる.

リウマチ性多発筋痛症

著者: 土橋浩章

ページ範囲:P.740 - P.746

Point

●リウマチ性多発筋痛症(PMR)は多彩な臨床像を呈するが,特異的なバイオマーカーは認められない.

●関節超音波はPMRの診断に有用な補助ツールである.

●ステロイド投与で速やかに改善を認めるが,減量は緩徐に行う必要がある.

重症筋無力症

著者: 村井弘之

ページ範囲:P.747 - P.752

Point

●ステロイド薬の導入によって重症筋無力症(MG)の致死率は大きく減少したが,その副作用などによって患者の生活の質(QOL)が損なわれていることが明らかとなった.

●成人発症MGの完全寛解は得難いため,治療が長期にわたることを意識し,QOLやメンタルヘルスを良好に保つように治療戦略を立てる.

●治療における最初の到達目標は,“経口プレドニゾロン5mg/日以下でminimal manifestationsレベル”であり,これを早期達成するよう治療戦略を考える.

●全身型MGでは早期から積極的に免疫療法(早期速効性治療)を行い,長期的ステロイド内服は少量にとどめるのが望ましい.

横紋筋融解症

著者: 花房規男

ページ範囲:P.753 - P.759

Point

●横紋筋融解症はさまざまな原因により骨格筋が障害され,血管透過性亢進による循環血液量の減少,急性腎障害(AKI),高カリウム血症を認める疾患である.

●血中ではクレアチニンキナーゼ(CK)が上昇し,病勢と関連する.一方,ミオグロビン尿が認められ,沈渣では赤血球を認めない尿潜血反応の原因となる.

●十分な輸液と尿のアルカリ化が図られるが,高カリウム血症は致命的であり,保存的にコントロールできない場合,乏尿・無尿では腎代替療法が行われる.

Crosstalk 地域医療×臨床検査・6

Treatable dementia

著者: 寺裏寛之

ページ範囲:P.711 - P.711

 病室に寄ると,高齢の入院患者さんと,見舞いにきているご家族との会話が聞こえてくる.

 「あんたはA子(長女の名前)か?」…….

生理検査道場・2

—血圧脈波検査②—判読の極意

著者: 阿藤大

ページ範囲:P.760 - P.766

 当講座第2回目「判読の極意」編では,判断を誤りがちな事例や当検査におけるエンベロープに関する解説を中心に行います.

 前回の当講座において,エンベロープの情報による血圧精度について解説しました.今回は四肢のバランスも踏まえて解説します.図1は前回提示した2番目の症例と同じで,エンベロープ・脈振幅レベルの部分を拡大しています.図に記す解説の通り,当症例の血圧測定精度は良好で,再測定の必要性はないと判断できます.

検査説明Q&A・36

血液細胞抗原検査で,同系統の細胞に対する抗体の陽性率に乖離がみられます.どのような原因が考えられますか?

著者: 池本敏行

ページ範囲:P.767 - P.771

 血液細胞の表面抗原解析において,同系統の細胞に対する陽性率に乖離がみられる原因として,以下のようなことを考慮する必要があります.

Salon deやなさん。・12

「大丈夫! 必ずきっと報われる!(涙)」

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.772 - P.772

 「われわれの首も……つながりましたね(涙)」

 安堵で目に涙が……そう,ボスと私は,慶應義塾大学病院が始める“がんゲノム医療”チームの一員となるべく,北海道からこの地へ来たのだ.

私のくふう

フリーウエアを用いたFCS出力ファイルの読み込みと描画

著者: 北村光夫

ページ範囲:P.774 - P.778

はじめに

 フローサイトメトリー法は細胞などの機能解析に威力を発揮し,細胞生物学,免疫学ならびに血液学などさまざまな場面で活用されている.そして,その解析のためには装置付属の測定ソフトウエアおよび専用の解析ソフトウエアが各メーカーから販売されている.利便性,簡便性を考えればそれらのソフトウエアを利用するのが一番効率がよいと思われる.しかし機器共同利用施設などから研究室に帰り,自分のパソコンでプロットを再確認したい場合など,ちょっとした用途で個人的に使いたい場合には市販の解析ソフトウエアは比較的高価である.そこで,パーソナルコンピュータでフローサイトメーターの標準出力ファイルであるfcsファイルを読み込み,細胞周期解析などで利用するヒストグラムを描画する方法を紹介する.

INFORMATION

第43回日本医用マススペクトル学会年会

ページ範囲:P.694 - P.694

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目次

ページ範囲:P.680 - P.681

書評 よくわかる血液内科

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.779 - P.779

「優しく」学べる血液内科

 本書は私自身,拝読してファンになっただけでなく,後期研修医,また若手スタッフの先生にもとてもお薦めの血液内科の本です.

 なぜファンになったかですが,まず第一に,“症例が豊富”であることです.各章のトップが症例で始まっていることから,症例ベースが好きな若手医師の関心を引き出してくださいます.

「検査と技術」6月号のお知らせ

ページ範囲:P.704 - P.704

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.746 - P.746

次号予告

ページ範囲:P.773 - P.773

あとがき

著者: 河合昭人

ページ範囲:P.782 - P.782

 皆さんゴールデンウィークはどちらに行かれたでしょうか? 筆者は,たぶん妻の実家に家族で帰省していることでしょう.せっかくの“大型連休”なので,どこかのんびりと骨休めしたいところですが,家族はそんなこと,許してくれそうもありません.さて,5月の連休のことを,なぜゴールデンウィークというのか,皆さんはご存じでしょうか? 諸説ありますが,そのうち一説を紹介しますと,戦後の映画宣伝のために使われたことが始まりといわれています.連休中に映画を上映するので,皆で観にきてほしいという意味での宣伝文句として“ゴールデンウィーク”ができあがった,というものです.このような背景から,某テレビ局では,ゴールデンウィークという言葉は用いず,“大型連休”といっているそうです.さらに,10年ほど前から,シルバーウィークという言葉も誕生しました.最初に聞いたときは,高齢者の何かのキャンペーンイベントかと思いましたが,実は9月の連休をこのように呼称しているメディアがあります.今後,ゴールデンウィークのように,もう少しだけ休日が追加され,大型連休に近づけば旅行にも行きやすくなるのにと思っています.

 連休があることは大いに結構ですが,日本人は休暇(余暇)の過ごし方が下手だといわれています.勤勉な文化で,有給休暇の消化率も欧米諸国に比べると低くなっており,いろいろな企業で有給休暇の取得率向上を目指しています.医療業界は,24時間運営している性格上,どうしても取得率は低くなっているようです.“みんなで仕事をシェアして,みんなで休暇を楽しむ”,このような文化が根付いてくると働き方が変わってくるかもしれませんね.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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