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雑誌目次

論文

臨床検査1巻7号

1957年10月発行

雑誌目次

グラフ

バンスライク検圧計の操作法

著者: 松村義寛 ,   藤野冷子 ,   荒木仁子 ,   遠藤豊

ページ範囲:P.389 - P.396

①左の検圧計は洗浄の目的で水銀球をとり除いてある。水流ボンプを連結して洗浄するのである

高級技術講義

凍結真空乾燥法

著者: 中村一男

ページ範囲:P.397 - P.405

1.凍結真空乾燥法とは何か
 こゝ教年来,我国に於ける凍結真空乾燥法の利用は急激に増大した。医学薬学関係の研究室に或は医薬品の製造工場に,遠心分離器と同じ程度に凍結真空乾燥機が使用されつゝある。それ程一般化された事柄であるが,今から十教年前には単なる実験室的興味の対称にすぎなかつたのである。
 凍結真空乾燥法(Drying by Sublimatian)とはその言葉の示す如く,水を溶媒とする溶液,懸濁液を一度凍結させ,これを納めた容器を真空にすることによつて凍結伏態のまゝで氷を効率よく蒸発させる即ち昇華させることによつて脱水しようとする乾燥法であつて,我国で古くから行われている寒天や高野豆腐の製造も,真空こそ用いぬが一種の凍結乾燥法である。

Rh式血液型検査法

著者: 徳永栄一

ページ範囲:P.407 - P.410

 Rh式血液型判定を行うにあたつては,Rh式血液型についてのくわしい理解が必要であるが,限られた紙面でこれを十分に説明することは非常に困難であるから検査に必要な最低限度の基礎知識をはじめにいくつか取上げてみたい。
 Rh式血液型抗原の命名法についてはWienerのものとFisherのものとがあるが,比較的わかりやすく,広く用いられているのはFisherの命名法である。これに従うとRh式血液型にはC-c,D-d,E-eの三組の対立因子があり,だれでも各組の因子を2つずつ持つ。例えばC-CについてはCC,Cc,ccの三種がある。D-d,E-eについても同様である。いわゆるRh陽性というのはD(+)のことである。これらの6種類の抗原は対応する抗体によつて検出される。この抗体はある抗原因子によつて免疫された人の血清中に見出されるものであつて,免疫の原因は輸血と妊娠がほとんどである。6種類の抗体中抗-dの存在は未だ確定しないが他の5種類の抗体は十分強力なものが市販されている。

技術解説

pHの測定法(Ⅲ)

著者: 山賀礼一

ページ範囲:P.413 - P.416

3.指示薬によるpHの測定法
 この方法にはpHの試験紙を用いる方法と溶液を用いる方法とがあつて,手軽にpHを測定できるのが特徴である。しかし着色した溶液や酸化性又は還元性溶液には用い難い。この指示薬は何れも弱酸または弱塩基で,未解離分子の状態で存在する場合と塩を作つて解離した場合とで色調の異るような物質である。
 たとえばパラトロフエノールのような酸型の指示薬では,pHが低ければHA型の分子となり,無色で,pHが高ければ塩を作り,この塩が解離してAとなり,黄色となる。

咽頭粘液の細菌学的検査

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.419 - P.422

 この材料の特徴は,他の材料と異り,非常に少量である点である。又患者は,多くの場合有熱患者であるから検査室まで来てもらう事の出来ない事が多い。しかも,入院患者よりも外来患者の材料が多い。
 このような理由から,材料を検査室に運ぶ事に注意が必要であるし,材料をとる時に,培養するのか染色鏡検するのかを考えておく必要も生ずる。

文献紹介

ケーラー(Köhler)照明法

ページ範囲:P.416 - P.416

 顕微鏡写真,観察の際に,照明法の良不良は,直接に,顕微鏡の性能を左右します。この際に,最もすぐれた照明法は,ケーラー照明法だといわれています。この方法について,ローマイス著,顕微鏡検査法の中に,丁寧な解説がありますので,紹介してみたいと思います。
 光源は,コンデンサー,光源絞りのついたもの(例えば千代田の新型光源)を用います。顕微鏡は,アツベのコンデンサー(油浸顕微鏡ならついています)を一ぱいに上げておき,反射鏡は,平面にしておきます。

試薬類の整備と汚染防止

ページ範囲:P.422 - P.422

 試薬のうち塩酸,苛性ソーダのように種々の検査に用いるものは一カ所にまとめて置き,検尿,血糖定量等特殊の目的だけに用いるものは夫々別に一組にまとめておく方が便利である。原料薬品はラテン名のアルファベツト順に並べるか,酸,塩基,燐酸塩,鉄塩,アルコール類等のように化学的分類に従つて並べる。
 試薬には調製年月日を明記する。レッテルの反対側から液を流し出す。

結核菌の短期間培養の一方法—Strip培養法

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.435 - P.435

 結核菌培養期間の長い事は,誰にとつてもなやみの種である。アメリカのバーロー療養所のHoytは次のような培養方法を発表している。これは比較的手軽にやれそうであるから紹介する。
 巾8mm,長さ約3cmのWhatman No.2濾紙を乾熱滅菌しておく。

『医学常識』

ポリオとそのワクチン

著者: 豊川行平

ページ範囲:P.425 - P.427

 ポリオ(小児麻痺)の病原体はウイルスで,これには現在免疫学的にはつきり区別される3つの型,Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ型のウイルスがある。感染は一般の消化器伝染病と同じく経口的にウイルスを摂取することによつて起るが,摂取されたウイルスがどこで増殖し,いかなる経路を通つて中枢神経系に到達するかという点についてはまだ議論があり,確定されていない。いずれにしても,ウイルスに感染して7〜21日(平均12日)の潜伏期をへて,発病する。つまり,四肢の麻痺が起る。その前に発熱その他の症状があるが,これはポリオ特有とはいえない症状で,麻痺が現われない限り,発熱その他の症状を呈している時期にポリオと診断することは殆んど不可能である。ただポリオが集団的に発生しているようなときには,麻痺の現われない時期にポリオらしいと考える場合があるが,こういう例はむしろ稀である。
 さて,ポリオの感染を受けると,必らず麻痺が現われるかというと,そうではなく,むしろ麻痺の現われる例の方が稀で,研究によると感染者数百人にわずか1人ぐらいしか麻痺が現われないといわれている。つまり,大部分は無症状感染を起しているのである。その点日本脳炎とよく似ているわけである。

検査室管理

臨床病理検査室の設置運営に関する基礎的諸問題(Ⅱ)

著者: 内海邦輔

ページ範囲:P.429 - P.435

IV.臨床病理検査室に於ける勤務人員について
 今迄は主として検査の種類や件数について考祭したが,次に検査に従事する人員について考察する。第11表は国立病院臨床病理共同研究班で調査されたものであるが,表の如く大部分の国立病院では検査専門の医師が充当されていない。第12表は同様臨床病理共同研究班で調査された昭和31年6月末現在検査室に勤務する人員と病床数及び検査総数との関係を示したものである。第1表,に比し2国立病院が入替つている。又検査総数には病理組織検査が加わつている。当病院の入替で病院No.が違つているから,第1表,とは病床数で対比され度い。第12表,を一見して感ずる事は全国的に医師技術員等が甚だ手薄な事である。No.1,No.2,を除き専任医師は甚だ少い。兼務医師の多い病院(No 4 No.8)もあり,それが適当でない事は後に述べる。技術員及び助手其の他も決して満足すべぎ数ではないが,技術員には各人の能力の問題が加わるので一概には云えないが,No 4,No.8,No12では此の程度の検査件数に比してはむしろ多い位である。

研究

保存用尿素培地の組成について

著者: 柴正一 ,   碓井義昭 ,   関孝 ,   石井亨

ページ範囲:P.437 - P.440

I.まえおき
 細菌のあるものがウレアーゼ(尿素分解酵素)をもち,とりわけその存否が腸内細菌科に属する菌種の中で変形菌を他の菌種と鑑別する重要な指標になることはよく知られていることである。従つて,腸内病原菌の検索を行う細菌検査機関では,ウレアーゼの有無を調べる培地—尿素培地—は日常よく用いられる培地であり,多くの培地製造会社によつて市販培地として提供されている。
 さて,わが社はこれまで試験の便宜と価格の点とから,衛生検査指針サルモネラの項1)に示してある組成に準じた10倍濃厚液をアンプルに封じて市販に供し,使う直前無菌的に10倍にうすめて使うことにしてきた。ところが,この組成は残念ながら保存性乏しく,「使う前からもう赤くなつている」という苦情にいつも苦しまなければならなかつた。

私の検査室

病体生理研究所

著者: 秋元寿恵夫

ページ範囲:P.442 - P.445

 わたくしにとつて,交字通り『私の検査室』といえるところは,いまここに紹介の筆をとらせていただく機会を与えられた病体生理研究所であるのだが,さてその現況はということになると,ただもう貧弱の一語につきており,どう考えても本欄に登場できる資格などありそうもない。とくに,最近にわかに高まつてきたかにみえる臨床検査の重要性に対する斯界の関心を敏感にとらえ,あちらでもこちらでもというふうにとり上げられるようになつた各種医学雑誌上での記事,その中でも,たとえば『実験治療』の300号から数回にわたつて連載されている東大病院臨床検査部の紹介記事や,その口絵になつている一連の見事なカラー写真などをみせつけられると,いまさらながらわれとわが身のみすぼらしさがあわれにさえなつてくる。
 とはいえ,これで意気沮喪してしまうのでは,せつかくのこの機会をとらえての発言も無意味なものになり終つてしまうであろう。いな,問題はかえつてこのあわれさの中にあるのである。そして,これはいささか逆説めいたいい方になるけれども,わたくしがここで,設備といい,人員といい,いずれの面からみてもほんのしがない存在でしかない病体生理研究所を『私の検査室』としてあえて俎上にのせた所以のものは,むしろそのみすぼらしいあり方それ自体を問題にするところにこそ存しているというべきである。

〈検査室メモ〉

ページ範囲:P.446 - P.447

病理組織片の包埋法
 手術材料等の包埋には,次のような事を考えるのが適当である。
 1)切片にする時,切りやすい事,即ち臓器がなるべくやわらかいままである事。

新刊紹介

「内分泌機能検査法」

著者: 茂手木皓喜 ,   梶原和人

ページ範囲:P.447 - P.447

 「内分泌機能検査法」は著者の序文にもある様に臨床的に応用しうるものを主眼として,内分泌学のめざましい進歩と共に診断法の研究に特に現在多くの人によつて認められている方法をやさしく書かれた本である。
 著者,茂手木皓喜,梶原和人の両氏は墓礎医学を終えられてから各々現職の小児科,産婦人科を專攻されて特に内分泌の検査法には古くから造詣が深い所から,本書は,非常に豊富な内容にもかゝわらず安易に読める筆法である。関係者の一読をおすゝめする。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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