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雑誌目次

論文

臨床検査1巻8号

1957年11月発行

雑誌目次

グラフ

細菌接腫手技

著者: 高橋昭三 ,   小山恒太郎 ,   鈴木葉子 ,   坂上ノリ子 ,   長沼惠子

ページ範囲:P.451 - P.458

 ① 右手にピペツトの入つた滅菌函,その少し内側にブンゼン燈,エーゼをおき,中央に接腫する病原材料,菌培養等をおき,左手に,接腫に用いる培地をおく。
 平板は,使用する培地,培養を一組にしておき,一組ずつ出して仕事をするようにする。中央の平板からひろつて,写真では,右手のサブロー培地,左手のスタフイロ培地,右前方の血液平板に接腫する直前である。

高級技術講義

超薄切片法

著者: 渡辺陽之輔

ページ範囲:P.459 - P.464

 超薄切片法とは少くとも0.1μ以下の厚さの切片を作ることで,その目的は云うまでもなく電子顕微鏡で観察することである。電子顕微鏡で観察する場合,何故そのように薄い切片が必要であるかといえば,大体次の3つの理由が挙げられる。即ち,その1は,電子線が物質を透過する力は極めて弱く,試料が厚い場合には電子線が全部試料に吸収され,高熱を生じ,試料が黒焦げになつてしまうからである。第2には,電子線の透過を許す程度の薄さの切片でも,薄さが充分でない場合には,切片内で電子線の散乱がおこり明瞭な像を作らない為である。第3は,電子顕微鏡の焦点深度が非常に深いことによるものであつて,切片内の構造はすべて平等な鮮明さで螢光版上に結像してしまう。この為厚い切片では,切片内の構造が互にかさなりあつて写真にうつり,細かい構造は蔽われてしまう。光学顕微鏡では,焦点深度が浅い為に切片が厚くても,焦点面に相当する部分のみが鮮明にみえるからあまり支障はないが,電子顕微鏡ではこのことが顫面に影響してくる。従つて細かい構造を見ようとすればするほど薄い切片が必要となつて来るわけである。
 以上のような条件を満足させるためには大体0.05〜0.03μの切片を作ることが必要であると云われている。超薄切片法の発達に伴い,今日ではこの程度の切片を作ることはさほど困難ではなくなつてきた。

座談会

胸部レ線撮影について(Ⅰ)

著者: 樫田良精 ,   田坂皓 ,   綱川高美 ,   関忠孝 ,   樋口喜代治 ,   松村義寛 ,   松橋直 ,   高橋昭三

ページ範囲:P.466 - P.474

 樫田 今日はどうもお忙いところをお集まり頂きまして有難うございました。胸のレントゲン写真の撮り方,という問題について話して頂きたいと思います。近頃はレントゲン機械を持つていないお医者さんは非常に少いように思います。しかし撮つた写真を拝見しますと,もう一寸何とか見られるような写真であつたならば,良い参考になるのだがと思う場合があります。これは機械のせいもありましようし,現像の仕方,撮り方,いろいろ問題があると思います。大病院で立派なレントゲン技師がおる場合には,技師の撮り方が悪ければ,技師の責任だというように私達は考えたいのですが,しかしそういう方でも一寸思わぬところでウツカリして失敗することもありましようし,多角的な面で胸の撮り方のコツというか,皆様の多年の御経験をいろいろお話頂きたいと思うのです。一番初めに田坂先生から総括的なことを一つ。

〈検査室メモ〉

血清中無機質の正常値(日本人)

ページ範囲:P.474 - P.474

Na 145.6±7.73 341±1.8 小林:東女医誌26591            (昭31)

複糖寒天培地の理論

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.481 - P.481

 クリクラー培地,ラツセル培地には,乳糖1%,ブドウ糖0.1%の二つの糖が入つています。これを半斜面,即ち高層部と斜面部のあるようにかため,斜面部に菌を接種すると共に,高層部に穿刺培養を行います。
 この場合,斜面部の菌は,空気が充分供給されますから,盛に発育しますし,物質代謝も盛んです。したがつて,ペプトン,プロテオーゼ等の,アミノ酸化合物が盛に分解され,その結果,pHは上昇し,培地表面はアルカリ性にかたむきます。しかも,アンモニアのように,小さい分子のものでなく,緩衝液の働きをするプロテオーゼ,ペプトンの存在の下で,アルカリ性になると,pHの変化はごく表面丈に止ります。このような状態の場所を,酸性にするためには,糖を分解して産生する酸がかなり必要であり,1%程度の糖が含まれた培地でないと,充分な酸は生じない事になります。したがつて,1%に含まれる乳糖を分解しない限り,斜面部は酸性になりません。

技術解説

pHの測定法(Ⅳ)

著者: 山賀礼一

ページ範囲:P.477 - P.481

6.ガラス電極による測定法
 a.ガラス電極法の概要
 ガラス薄膜の両面に二種類の水溶液が接するとき,両液間に一定の電位差が生じ,この値は両液のpHの差に比例して,pHの高い方の液が正となる。今一方の液のpHを一定に保つて,他方の溶液のpHを種々に換えて各電位差を測定すると,この電位差とpHとは互に直線的関係にある。
 PhⅡ|glass|pHⅠ

血液検査法(Ⅰ)—基本操作

著者: 天木一太

ページ範囲:P.483 - P.487

 血液の形態学に関する検査は,他の分野の検査,例えば生化学検査法等とはかなり異なつた点があつて,之を正しく行うためには特殊の知識と操作が必要であり,一寸した不注意から大きな誤差の生ずることもしばしばである。血液検査法に関する書物は既に少くないが,現在この仕事にたずさわつている人々を対称にして,一層正確なデータを得るために役立ちそうな点につき述べてみたいと思う。
 血液を扱うに当つて先ず第一に血液が溶液ではなく,各種の細胞と血漿よりなる懸濁液であることを常に忘れてはならない。そして各細胞は各々異なつた比重,粘着力,表面張力,崩壊性を有しており,更に凝血,溶血並に細胞の遊走等という性質もある。これらの事実を正しく理解していることが正しい検査を行う上に是非必要なことである。又形態学的検査に限つたことではないが,自分の行いつつある検査が如何なる意味を有しているか,その操作のうちにどの様な現象が進んでいるかか理解していることも大切なことである。

講座

臨床検査に必要な法律の知識

著者: 石丸隆治

ページ範囲:P.489 - P.491

 編集者から,臨床検査に関係ある法律について何か書けとの命令である。編集者は,おそらく臨床検査に伴う責任の所在を明らかに規定した法律,あるいは臨床検査技術者に対する身分法等について,その解説を要求して来たものと考えられる。又,読者諸氏もこれらの問題,特に後者について大いに関心を持つていることと思う。しかしながら,臨床検査そのものを規定した法律は今のところなく,又検査技術者の身分法も法案は議員提出として国会に上提はされているが継続審議中であり,未だ法律としては公布されていない現状である。
 従つて,要求された題名については現在のところ解説することは不可能であるので,臨床検査ないしは衛生諸検査と何等かの関係のある法律について,如何なる規定が行われているか簡単にふれてみる。

新しい検査法

エレクトロ・ヘモスコープの検討

著者: 大橋辰哉 ,   今村幸雄

ページ範囲:P.493 - P.496

 外来,入院の別を問わず,血液検査は諸検査の中で,尿屎と共に最も頻回に行われるもめであり,特にその中で主位を占めるのは血色素量及び赤血球数,白血球数の算定である。これらの検査は現在尚ほとんど大部分の医療機関において,数十年来依然としてSahli法や計算板法によつて行われている。このSahli計や計算板,更にそれぞれに併用するピペツト類は,この数年来日本血液学会で検定が行われるようになつてからは著しくその精度が高くなり,これらの検査法にても正確な成績が得られるようになつた1)2)が,こうした検定合格品を使用しても誤差が生じ易く,信頼される結果を出すためには,相当期間修練しなければならない。また特に血球計算は不相応な時間と労力を要するため一日に処理出来る患者数に制恨があり,且つ顕微鏡的観察から生ずる疲労のために,検査成績の誤差を大にするなどの欠点がある。こうした不便な欠点を除去する可能性ある検査法として光電計による方法がある。血色素量測定については論ずるまでもないが,血球数算定についても近来この方法による試みが盛んに行われるようになつた。

検査室統計

一般細菌検査の統計的観察(昭和31年度)

著者: 永井吉造 ,   村山翁助 ,   粟田口重義 ,   大竹喜雄 ,   新井正美 ,   佐伯滕男 ,   桂川晶子 ,   鈴木葉子 ,   長沼恵子 ,   坂上のり子

ページ範囲:P.497 - P.506

 昭和30年6月に,この検査室が発足した。いくらか軌道にのり出した昭和31年度の結核菌を除いた一般細菌検査について集計した結果を報告する。日常の検査は,細菌学教室の援助の下に,1名の専属医員,および技術員4名が2名づつ交代して行つた。この統計を作るには,臨床検査副部長樫田良精博士,臨床検査部細菌室運営主任川上保雄博士の御指導は勿論,各科有志の医局員の御協力による所が多い。
 検査項目は,顕微鏡検査,培養検査,同定検査,感受性検査,Widal, Weil-Felix反応の5項目である。

私の検査室

川崎市衛生試験所

著者: 佐藤定吉

ページ範囲:P.509 - P.511

 川崎市は,東西28.94km,南北17.07kmの,東西に細長い地形で,最も巾の広いところで,30.0OOm,狭いところが1.070m,全面積は.132,25km2あります。
 人口は現在約50万を超しております。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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