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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査10巻11号

1966年11月発行

雑誌目次

グラフ

乳腺疾患の肉眼的観察

著者: 高橋勇

ページ範囲:P.1082 - P.1083

 乳腺の疾患は,ほとんどが乳房内に偶然無痛性の腫瘤を触知したり,有痛性の腫瘤または腫脹を主訴として来院するものである.
 従来,乳腺内のしこりの代表としては乳癌を,痛みの代表としては急性乳腺炎を考えることが一般の人たちの常識となつていた.しかし近年医学的啓もうによつて,婦人の乳癌に対する関心と恐怖がたかまり,乳腺内のしこりはもちろん,痛みも,すべて乳癌と関連づけて受診する場合が少なくない.

筋電図のとり方

著者: 中西孝雄

ページ範囲:P.1085 - P.1092

 筋電図検査を直接行なうのは専門の医師であるが,十分な検査を能率的に行なうには,検査技師の介助が望ましいことはいうまでもない。その際検査技師はいかなる事柄に注意すればよいであろうか。最近大病院における臨床検査が,"中央検査室"という共通の場で能率的に行なわれるようになったため,検査技師も,内科,整形外科,耳鼻科等あらゆる診療科の医師を介助しなければならなくなった。しかし診療科毎に検査方法が異なるので,介助のし方も各科毎に多少異なると思われるがここでは各科に共通な事柄について図示することにする。
 筋電図には従来一般にいわれている筋電図と,誘発筋電図とがあるが,ここでは筋電図検査室で行なわれる可能性のある検査をも含め,介助法一般について述べる。

綜説

化学療法における細菌検査の問題点

著者: 徐慶一郎

ページ範囲:P.1093 - P.1096

まえがき
 予研から当院へ転勤し,細菌,ウイルス,血清関係の臨床検査業務に関係するようになってから,早くも11年余を経過した。
 この間,本領域における学問の進歩は,象ことにめざましいものがあり,中でも,細菌検査としては,数多くの既製培地の導入により,細菌の分離培養ならびに同定検査が簡易化され,さらに,ディスク法による薬剤感受性検査法の確立により,化学療法に直接寄与するところがきわめて大きくなったため,日常検査における細菌検査の比重が,ますます大きくなったといえよう。

技術解説

免疫血清学におけるオートアナライザーの応用

著者: 福岡良男 ,   笠原政幸

ページ範囲:P.1097 - P.1102

 1956年Skeggs1)2)が発表した自動化学分析装置は広く臨床生化学検査に用いられてきたが近年にいたり血清学的検査(定性,定量的,血球凝集反応,補体結合反応)にも用いられるようになってきた。本稿では自動化学分析装置オートアナライザー(以下AAと略記)の概要とそれを用いた血清学的検査の方法についてのべる。

皮膚真菌症の検査<1>—直接検査法

著者: 香川三郎

ページ範囲:P.1103 - P.1110

 真菌症の診断を確定するには病巣部より採取された検査材料中に菌要素を直接みいだすこと(直接検査),培養によって原因菌を分離し,これがいかなる菌種であるかを同定すること(培養検査)の二者が必要である。というのは真菌類では元来病原性のものと非病原性のものとがあり,病原性のものはともかくとして,元来非病原性のものでも時に病原性をもつことが少なくないからである。今,培養によってある種の真菌が得られた時,これが病原性を持つもの,すなわちその疾患の原因菌であるか否かを決定すべき段階において,その菌が元来非病原性のものである時には,被検材料中にその菌に見合う菌要素が認められたか否かが問題になる。一般に病原をなしている場合,材料中に証明される菌要素は寄生形態を示し,増殖している像を呈するので,この点に注目して観察する必要がある。
 たとえば喀痰中からアスペルギルスが分離培養された場合,喀痰中にこの菌に見合う太い菌糸ないし菌糸塊,頂嚢と呼ばれる本菌に特有な分生子柄の先端膨大部などが認められれば,この菌の病原性はほぼ確定するが,仮性菌糸,分芽胞子等カンジダに見合う菌要素が証明された場合は,培養されたアスペルギルスは汚染菌,すなわち非病原菌と考えるのである。

ジデロブラスト(鉄可染性赤芽球)の染色法とその診断的意義

著者: 勝沼英宇 ,   高崎優 ,   渡辺佳俊 ,   佐藤淳

ページ範囲:P.1111 - P.1115

緒言
 赤血球内の鉄顆粒の存在を始めて指摘したのはGruneberg (1941)であるが,この現象が摘脾後に特に著明に現われ,臨床家の注目をひいたのはDoniach,Gruneberg,Pearson (1943)らの発表後である。その後溶血性貧血にも出現することが知られ,さらに最近Heilmeyerらの鉄代謝に関する広汎な研究により新たな鉄顆粒含有性赤芽球を主体とする疾患群が発表され,この疾患群が低色素性貧血を呈することから臨床血液学の鉄療法に新知見をもたらした。すなわち従来低色素性貧血といえばその大半が鉄反応性貧血であるが,低色素性貧血で鉄に反応しない一群がこれに該当することが判明されるにいたった。したがって低色素性貧血でも鉄が奏効するものと,奏効しないものとがあり,その鑑別にこの鉄顆粒染色が必要になってきた。この意味で鉄顆粒染色法は将来,貧血診断法のルーチン染色法の1つとして中央検査室に取上げられる可能性が十分であると考えられたので,私どもの経験を書き,大方の批判を抑ぎたい。

座談会

術中迅速組織切片作製法

著者: 安食洋子 ,   小野寺勝子 ,   須山貞子 ,   千葉宗平 ,   山本光枝 ,   畠山茂

ページ範囲:P.1116 - P.1123

 "速さと,正確さを要求される術中迅速組織切片作製"に日頃とりくんでおられる方々にお集まりいただき,その苦心談と"こつ"を披露していただいた。

講座 臨床血清学講座Ⅳ

総論(4)

著者: 福岡良男 ,   安藤清平

ページ範囲:P.1134 - P.1142

I.血清反応に用いる抗原・抗体・補体・試薬類
 血清反応に用いられる抗原,抗体,補体,ラテックス試薬,緩衝液が製品として市販されるようになり,検査に従事する人々の手数が非常にはぶけるようになった。
 補体結合反応を実施する日には朝早く出勤して,モルモットから採血し,自分で補体を作った経験のある年輩の技師の人々にとってはまるで夢のような時代である。しかしあまりにも便利になったために,現在検査に従事している人々の中には市販されている抗原,抗体,補体,試薬,緩衝液の中にはどのようなものが含まれているか,またどのようにしてつくられたものか,あるいは,これらのものの中に含まれている成分の意義を知らない人がかなりいるようになった。

やさしい数学

推測統計入門(2)

著者: 高垣東一郎

ページ範囲:P.1143 - P.1147

 新しい数学序説(1)〜(3),確率入門(1)(2),統計入門(1)〜(3)に続いて,前回から推測統計入門(1)に進み,次の各内容を学習した。
 推測統計学の考え方とその起源,母集団平均の推定,母集団比率の推定,標本抽出の方法など。

第8回衛生検査技師国家試験—昭和41年度問題・模範解答(B)

ページ範囲:P.1149 - P.1154

血清学
 問題1不完全抗原は次のどの性質をもっているか。
 1.抗体と結合はしないが,それを単独で動物に接種すると抗体を産生する。

2級臨床病理技術士資格認定試験—昭和41年度問題・解答・講評(B)

著者: 加々美光安 ,   杉島聖章 ,   安田三弥 ,   牛山清司 ,   楠川禮造 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.1155 - P.1159

血液学
1)次の文の□の字句のうち,適当なものを○でかこめ。
(イ)血液検査のための凝固阻止剤として,二重シュウ酸塩が用いられるが,これはシュウ酸カリウムとシュウ酸ナトリウム,リチウム,アンモニウムの混合剤で,血液1mlに対し粉未として2mg,5mg,10mgの割合で用いる。このものは白血球形態,赤血球容積,血小板数を変化させない利点をもつ。

研究

顕微鏡用合成封入材の研究—とくに各種封入材との比較

著者: 秋山太一郎 ,   上野節子

ページ範囲:P.1160 - P.1163

まえがき
 光学顕微鏡用封入材は組織標本をつくる上になくてはならないものであるが,これまで研究の対象として,ほとんどとりあげられていない。そこで封入材の現状をながめ,さらにわれわれが合成したものを中心として批判することにする。昔から"封入材といえばBalsam"というように唯一のものとなっていたが,これは天然物であるために産地,精製度,保存条件などによって材質の不均一性はまぬかれない。それのみならず,これらの条件に関連してBalsamの酸化による染色の不安定など致命的な欠点がある。にもかかわらず代替的なものがなかったので,長い間依存せざるを得なかった。ところが1950年代になって高分子化学の急速な発展にともない,わが国のみならず欧米でも合成封入材が登場してきた。今日われわれが知りえたものは米国にClarite,HarlcoSynthetic Resin (H.S.R.),Permountがあり,さらに1種類,名称は明らかではないがドイツにあるときいている。いずれも材質が何であるか不明である。わが国では著者の一人秋山1)が1954年スチロール・アクリル系のものから合成したものであるが,今日Bioleitの商品名で市販されている。さて,Bioleitが世にでてからすでに10年余を経た今日としては再検討の余地も十分考えられる。そこで,素材は同系のもので純度,分子量分布などの点をさらに改善した新しい封入材を合成することができた。

アデノウイルス感染症の病原診断

著者: 川名林治 ,   金子克

ページ範囲:P.1164 - P.1167

はじめに
 アデノウイルスはアデノイドの組織培養中にたまたまRowe1)らにより特異的な変性を示すagentの発見に始まったことは有名な話である。Huebner2),Parrott4),Hilleman5),Ginsberg6)らにより呼吸器疾患,発疹症,眼疾患,近年においては腫瘍ウイルスとしてその病因ならびに血清学的研究についての詳細な報告が発表されてきている1)〜14)22)23)。わたしたちもアデノウイルス8型による流行性角結膜炎15),アデノウイルス3型の咽頭結膜熱16)を経験しすでに報告したが,これら病原ウイルスの検索の方法,すなわちウイルスの分離,中和試験(Neutralization test;NT),補体結合反応(Complement-fixation test;CFT),赤血球凝集抑制反応(Hemaggulutination inhibition test;HI)の術式14)につき詳述したい。

錠剤による尿ウロビリノーゲン定性法の改良と半定量への利用

著者: 水田亘 ,   山道宏

ページ範囲:P.1169 - P.1170

 尿のAldehydc反応をポリビニールアルコールを基材とした錠剤**上でおこない,その呈色反応の強さによって尿中Urobilinogenの定性分析を行なうSpot testをさきに発表した1)2)。その時倍数希釈尿をそれぞれ錠剤の上に順次滴下することによって半定量分析が可能であることを示した。しかしこの方法では尿の倍数希釈の操作を要すると共に希釈した数に応じた錠剤を必要とするなど改良の余地を残している。Spot testの定性値(正常,十,廾,卅陽性)がそれぞれ定量値としてどの範囲の濃度に分布しているかをしらべ,肉眼判定を客観化するため対比用色調表をつくると同時に,これによる定性値に半定量測定値としての意味をもたせることができるかどうかにつき検討し良好な結果をえた。

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Glossary≪10≫

著者: 横山芳郎

ページ範囲:P.1148 - P.1148

<e>
eclampsia子癇
edema浮腫

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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