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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査10巻13号

1966年12月発行

雑誌目次

グラフ

子宮がんの肉眼検査

著者: 高橋正宜

ページ範囲:P.1202 - P.1203

 子宮癌はその発生部位によって頸癌と体部癌とに分けられる.頸癌の発生頻度は体部癌よりもかなり高く,従来9:1といわれたが近年体部癌も増加の傾向にある.今回は主として頸癌に焦点を絞るが肉眼的に腫瘍はその発育形式から次の2種類に分けられる.すなわち外向性増殖型(腫瘤型)は半球上に,あるいは友面が乳嘴状の突起をもって花菜状に増殖する.内向性増殖型(浸潤型)は深く筋層に浸潤するもので潰瘍を形成し噴火口状の潰瘍を作ることが多い.癌の上皮内に限局する初期癌は肉眼的に異常所見を示さず,非特異的なびらんを伴い自覚症として接触出血を訴える程度である.臨床的に癌の浸潤度から次のごとき国際的病期分類が広く用いられている.
 0期:上皮内癌,あるいは局在癌,I期:子宮頸部に限局する癌でさらに亜型に分類される.Ia期:臨床的に認められない微小浸潤癌,Ib期:浸潤の深さが1cm以下の浸潤癌,Ic期:浸潤は1cm以上に及ぶが頸部に限局する時期.II期:子宮頸部を越えて進展しているが骨盤壁に到達していない時期.III期:骨盤壁に浸潤のおよんでいるもの.IV期:膀胱あるいは直腸を浸し,遠隔臓器へ転移を示す時期.

紫外部分光光電光度計のつかいかた

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.1205 - P.1212

 尿酸,トリプトフアン,フェニルアラニンなど芳香環を有する分子は紫外部に強い吸光がある。紫外部の吸光度が測れるならば,発色試薬を加えなくても定量が可能というわけである。光源として水素放電管を使い,プリズムやキュベットは石英製というので,装置は高価となり,普及が遅れたものであるが,回折格子分光器が漸次安価になり,水素放電管の寿命が永くなり,比較的に安価に入手できるようになってきたので,臨床検査室の必需品となりつつある。ことに諸種の酵素の測定は最終的にはNAD,NADPの還元型のもつ340mμの吸光の測定に導くことができるので紫外部吸光の測定は臨床化学の強力な武器となっている。多くの形式のものがあるが例として日立CPU−2型について示す。

綜説

生理検査室における検査技師の役割

著者: 本田正節

ページ範囲:P.1213 - P.1218

はじめに
 生理検査室で働いておられる技師の方々の役割についてのべるようにとの臨床検査の編集者から依頼があったので,二,三思いつくままに記してみる。
 生理検査には他科と共通な点もあるけれど,多くの異ったところがある。そこで生理検査の特長についてのべると共に,ここに従事している技師諸兄諸姉のぜひ知っておかねばならないことを記述するつもりであるが,わたくしの専門分野は心電図,脳波,筋電図などの電気理学検査に属しているので,多少かたよったものとなることをあらかじめ御承知願いたい。

技術解説

原発性非定型肺炎(マイコプラズマ肺炎)の検査法—そのコロニーの形態と分離培養法

著者: 石田名香雄 ,   荒井澄夫

ページ範囲:P.1219 - P.1224

はじめに
 マイコプラズマ(mycoplasma)は動物かヒトの健常もしくは炎症を有する口腔,気管支,尿道,生殖器などの粘膜より分離される微生物である。この微生物は細菌と同じく無細胞培地で増殖できるくせにその感染単位の大きさはインフルエンザウイルス位で,小さいものは8Gmμと報告されている1)。マイコプラズマの特色の一つは普通の細菌と異なり細胞壁をもたず,その代りコレステロールを多量に含む細胞膜よりなっていることである。したがって,この生物は植物細胞ではなくむしろ動物細胞に近いと考えてもよいわけで,さらに積極的ないい方をすれば原虫の仲間と考えている人もある2)。細菌染色に用いる染色剤では良く染まらない。
 さてヒトにつくマイコプラズマで現在まで広く知られているものとしては表1のごとく5種あるが,この他にもTstrain3),navel strain4)などが特に非淋菌性尿道炎(nongonococcal urethritis)の起炎菌として有名である。しかしこのうちヒトに病原性を確実に示すマイコプラズマは後ほど詳しく述べるMycoplasma pneumoniaeのみである。すなわちM. hominis(type I)はヒトに実験的に感染させて上気道炎を起すといわれるし5),M. orale type I(現称:M. pharyngis)は白血病患者の骨髄より直接寒天培地に分離されたこともある6)

皮膚真菌症の検査<2>—培養検査の実際

著者: 香川三郎

ページ範囲:P.1225 - P.1230

 前回述べたごとく,真菌症であるか否かは直接検査により決定できるが,それがいかなる菌種によるものであるかは,病巣より原因菌を分離培養し,その菌について菌学的検査を行ない菌種を同定することによって始めて決められる。したがって培養検査には原因菌を病的材料中から分離培養することと,分離した菌につきその菌学的性状を知るための培養,すなわち同定用の培養の2通りが必要となる。
 この各々の目的のために種々な培地が作られているが,これらの培地の組成,作製法等に関してはすでに本誌,本巻2〜7号に曾根田,川北両博士が詳述されているので,これを参照して頂くことにして,ここでは単に培地名を記すに止め,また培養検査ないし同定法についても両博士の記載との重複を避け,むしろ培養同定法に関する実際的な手技やそのさいの注意事項などを中心に解説してゆくこととする。

臨床酵素検査キット—2,3の市販品の使用上の注意点

著者: 茂手木皓喜

ページ範囲:P.1231 - P.1235

はじめに
 酵素の臨床面への応用はめざましい進歩をとげており,現在10数種類の酵素測定がルーチンで行なわれており,酵素レベルでの疾病の診療に役立っている。
 酵素の測定は後にのべるごとく種々の条件に左右される。これら条件のうちでもっとも大切な1つは試薬の質である。純度の高い,力価の安定な試薬をたえずチェックしながら使用しなければならない。このような事情を含めて,検査の簡易化・能率化のため各種酵素測定用の調整試薬が開発され,ひろく利用されるようになった。

座談会

医療チームにおける検査技師の役割—検査技師のモラル

著者: 石田泰子 ,   北林滋 ,   小酒井望 ,   寺村公子 ,   丹羽正治 ,   二方幸子 ,   樫田良精

ページ範囲:P.1246 - P.1254

医師にあるヒポクラテスの誓いのような……
 司会(樫田)今日はあまり堅苦しくなく,検査技師のモラルという問題でいろいろお話していただきたいと思います。モラルとは何だといわれると困りますが,われわれ医師の仲間には昔から医師の倫理というものがあって,外国では卒業のときにヒポクラテスの誓いとか,これから医者になるにはという心がけを誓う,また同じ医療関係者の中でも,看護婦は戴帽式というのがあってそのときにナイチンゲールの精神を教える。そういうようなセレモニーがあります。そのセレモニーは別として,同じ医療に従事すろ検査技師にも何らかの道徳規律といいますか,何らか目標があってほしいと思います。こうあるべきだろうとか,こうあった方がいいだろうというような,いうんな経験談なり,日ごろから考えていらっしゃるお話を伺いまして,立派な検査技師になる心がけとでもいう内容を出していきたいと思います。
 最初に私ちょっと申し上げたいのは,検査技師というのが今どんどんふえておりますけれども,昔は医師自らがやっていたことを代行して下さっているわけです。だからある意味では医師の手の代わり,あるいは頭の代わりをやってるわけです。だから医療の一環として,検査技師が単なるサラリーマン的な気分で,時間だけつぶして,形だけ仕事を終わってやられたんでは,医療の過誤が起きてくる可能性が多分にあります。

講座 臨床血清学講座Ⅴ

各論(1)—連鎖球菌感染症の血清学

著者: 福岡良男 ,   安藤清平

ページ範囲:P.1258 - P.1266

I.連鎖球菌の抗原
 連鎖球菌の感染が直接的に,あるいは間接的に病因となる疾患は数多くあり,扁桃炎,猩紅熱,丹毒,産褥熱腎炎,リウマチ熱などが知られている。これらの疾患の原因となる連鎖球菌はβ型溶血を示す溶血性連鎖球菌(以下溶連菌と略す)であり,血清学的分類からみれば90%以上がA群に属している。A群連鎖球菌には種々の抗原性物質が存在するがそれをまとめると表1のごとくなる。表に示したごとく連鎖球菌は菌体成分のみならず,細菌の産生する物質に多種類の抗原性物質が存在するために,連鎖球菌感染症においては実に多種類の抗体の産生が認められるる。

やさしい数学

推測統計入門(3)

著者: 高垣東一郎

ページ範囲:P.1267 - P.1271

 新しい数学序説,確率入門,統計入門に続いて,推測統計入門の(1)(2)に進み,それぞれ次の内容を学習した。
 推測統計入門(1)……推測統計学の考え方とその起源,母集団平均(または比率)の推定,標本抽出の方法など。

レポート

みつめたい私達の現状≫4≪—アンケートにみられた全国国立大学衛生検査技師の実態

著者: 郡山八郎 ,   福篤利江 ,   佐藤征 ,   清水加代子 ,   三浦秀人

ページ範囲:P.1272 - P.1275

今月の調査
現在の職場と仕事をどう受けとっているか!
 全国国立大学中央検査部で働く衛生検査技師に求めたアンケートについて,これまでに衛生検査技師になった動機をはじめ職業の全般的なことについて述べてきましたが,今回は,私達が現在勤めている「職場について」「仕事について」の問題を中心にみてゆきたいと思います。

研究

GL管による尿糖測定に関しての検討(II)—反応に影響を与える因子について

著者: 佐々木禎一 ,   坂本稜子 ,   牧竜子

ページ範囲:P.1277 - P.1280

 GL管による尿糖測定のさい反応呈色に影響をおよぼす諸因子について検討して,次の諸結果を得た。
1)Na2CO3液と混合して紫〜青色を呈する尿試料がまれにあるが,これは微量混入のBSPによるものと思われた。
2)D-glucuronolactone,cysteine-HCIの混在はかなりの高濃度で吸光度をわずかに変化せしめるが,glutathione,ascorbic acidおよび尿素の混在(0〜200mg/dlは測定値に影響を与えなかった。
3)三塩化酢酸による除蛋白は尿糖測定値にほとんど影響を与えぬと考えられる。
4)0〜0.5%濃度のalbuminの存在は尿糖測定にまったく影響を与えぬが,globulinは0.1%以下でも混濁の原因となる。
5)尿色素の除去は酸性白土よりも酢酸鉛/無水Na2CO3(8:1)混末が良く,混濁や尿糖の損失もみられないようであった。

Chloride Meterによるクロール定量法の検討

著者: 池辺正 ,   佐々木禎一

ページ範囲:P.1281 - P.1286

 "EEL"Chloride Meterによるクロール定量につき,基礎的諸条件を検討して次の成績を得た。
1)高濃度のブドー糖,尿素,ビリルビンの混在,溶血,および他イオン(Na,K,Ca++,HCO3)の共存は測定値に影響を与えなかった。
2)添加するゼラチン滴下数の多少の減少,および酸緩衝液の温度(5,15,および38℃)も影響を与えない。
2)本器は再現性も良好で(C.V.=0.4%),また数種の標準血清の実測成績からみて,きわめて正確なクロール測定器であることが知られた。
4)銀電極セットの若干のずれは測定値に影響を与えなかったが,銀電極の酸緩衝液に入る程度(酸緩衝液量を反映する液面の高さ)を一定にしなければ測定値は変動する。
5)酸緩衝液による盲験値を補正しておくと検量線は理論曲線と合致する。
6)電極は常に清浄にしておくべきである。
7)測定値は従来のSchales&Schales法による成績との間に高い相関性を示した(r=0.981)。
8)上記の成績から二,三の点に留意しさえすれば高度の熟練を必要とせず,容易に血清中,尿中,必要によっては胃液などの生体試料中のクロールを精密かつ正確に測定し得る極めて優れた自動迅速測定器であるといえよう。

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Glossary≪11≫

著者: 横山芳郎

ページ範囲:P.1276 - P.1276

hypospadia尿道下裂
hyposthenuria低張尿

「臨床検査」 第10巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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